健康寿命は年々延びている
健康寿命とは日常生活に制限のない期間のことです。厚生労働省の資料では、生涯を終えるまでに介護などが必要となる推定年数は、男性では約9年、女性では約12年と報告されています。
健康寿命は男女ともに年々延びており、高齢者が地域活動や、定年後に新しく仕事を始めるといった、社会参加する機会の増加が要因の一つだといわれています。社会参加によって、体を動かす機会の増加に繋がり、結果、健康でいる期間(健康寿命)が長くなったと分析されています。
<写真>健康寿命と平均寿命の差のグラフ
(出典:厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書 健康寿命の全国推移の算定・評価に関する研究―全国と都道府県の推移―から推計)
「運動による予防のプロ」理学療法士
健康寿命が短くなってしまう主な原因は、脳卒中・転倒骨折・認知症といわれています。共通していることは「運動による予防が効果的」という点です。
医療専門職である理学療法士は一人ひとりの身体の状態を把握し、どのような運動が効果的かを判断し、各人に合わせた運動を教え、高齢、ケガ、病気や障がいなどにより運動機能が低下した人に対して、座る・立つ・起き上がる、歩くなどの基本動作能力の回復・維持をサポートするエキスパートです。
<写真>作業療法士によるリハビリ「ピアノ演奏」
<写真>理学療法士によるリハビリ「子どもの杖歩行」
私たちの健康を支える人材を養成 YMCA米子医療福祉専門学校
米子市には、大規模な病院と「かかりつけ医」との連携が図られているなど、医療が充実しているだけでなく、鳥取大学医学部をはじめとした医療人材を育てる環境が整っています。
超高齢社会を迎えた日本において、地域の医療・介護・福祉の現場を支える専門職に対する需要が高まりをみせるなか、YMCA米子医療福祉専門学校では、理学療法士・作業療法士・介護福祉士といった医療福祉のスペシャリストを養成し、卒業生は専門性の高い医療現場で日々、活躍しています。これらの医療人材は、これからの超高齢社会を迎える医療現場において活躍の場が広がっています。
<写真>YMCA米子医療福祉専門学校
リハビリで心身共に助けられた米子市総合政策部・大江部長に、理学療法士との出会いについてインタビューしました
<写真>「リハビリ中は理学療法士さんに元気づけられた」と語る大江部長
「からだ」も「こころ」も弱っている。それを力づけられる仕事
理学療法士さんとの出会いを教えてください。
―今から4年前、急性骨髄性白血病という診断を受け、米子医療センターのクリーン病棟で闘病生活に入りました。すぐに抗がん剤治療を開始。強力な抗がん剤を1週間続けて投与して骨髄中の白血病細胞を叩き、その後正常な造血機能が回復するまで34週間待つ、というサイクルを4 5回繰り返します。抗がん剤の副作用はとても辛かったですが、驚いたことに、副作用の症状が少し治まると、治療中ながら体力維持のためにリハビリを始めます。出会いはその時、数年前にYMCA 米子を卒業された若い女性の理学療法士さんでした。
すぐにリハビリが始まるのですね。どのようなリハビリだったのでしょうか。
―クリーン病棟内を歩いたり、ストレッチしたり、エアロバイクを漕いだりです。延べ11か月の入院生活のうち約半分がリハビリできる状態で、リハビリ中はずっと理学療法士さんにお世話になりました。クリーン病棟なので家族以外とは面会ができず、家族でも1日15分の制限があります。家族も毎日来られるわけではないので、自然と理学療法士さんといろんな世間話や、病院外の状況を聞いたり、時には愚痴を聞いてもらったり…。身体のリハビリはもちろんのこと、心のリハビリも、理学療法士さんが担ってくれたと思っています。
心のリハビリですか。
―そうです。1回あたり30分程度は一緒に居ますので、すごく忙しくしておられるお医者さんや看護師さんとはゆっくり話す時間を持てない中で、たくさん話ができるリハビリの時間は、とても楽しみでした。理学療法士さんとしては「気持ちのケア」をそんなに意識されていなかったかもしれませんが、私からすると、ちょっとした不安感や孤独感を紛らわせてくれた存在でした。
私は、骨髄バンクを通じてドナーさんがあり、骨髄移植を経て白血病を克服することができましたが、そのような大病を初めて経験して、一つ分かったことがあります。それは、命に関わる病気になった方に対する接し方です。それまでは、お見舞いに行った時など、どんな言葉をかけていいのか迷い困っていました。
患者の気持ちは不安に満ちています。その対処として、不安を愚痴や弱音として吐き出しながら、少しでも希望を持ちたい、何でもいいから明るい保証が欲しいと思っています。当然ながら、お医者さんや看護師さんは「絶対に大丈夫!」とは言ってくれませんが、病気に立ち向かい前向きに考え始めた時、誰からでもどんなことでも、同じ方向で励まし支えてもらいたいのです。
理学療法士さんとの会話は、家族以外の第三者と直接ゆっくり話ができる貴重な機会でした。時には不安な気持ちや愚痴を聞いてくれながら、「早く元気になって、退院したときは自分の足で歩きましょう!」という感じで接し、寄り添ってくれました。「必ず元気になって、絶対に自分の足で外を歩くんだ!」と強く思いました。
とても意義深いお仕事なのですね。
―そうです。お医者さん、看護師さんのみならず、理学療法士さんも、闘病を支えてくれる重要なスタッフです。身体も心も弱っている患者の力づけ、支えになり得る、とても意義のある仕事だと思います。
では最後に、担当された理学療法士さんへ一言をお願いします。
―命を懸けた闘病の時、本当にお世話になり、支えになってくれました。感謝の気持ちで一杯です。心からありがとうございました。
<写真>「理学療法士さんの仕事は、意義深い。支えになってくれて本当にありがとうございました。」と語る大江部長
掲載日:2019年2月12日