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第3回 鳥取大学医学部における基礎研究とバイオ関連企業

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第3回 鳥取大学医学部における基礎研究とバイオ関連企業

私たちが暮らすまち・米子にある鳥取大学医学部では、世界で唯一の先進的な研究が多く行なわれています。

今回は、鳥取大学医学部生命科学科が創設された意義や研究などについて紹介することで、米子から世界に向けて大きな可能性が広がっている「ワクワク感」を感じていただき、米子に誇りを持ち、好きになってもらうきっかけになればと思います。

親しみを込めた「医大」 鳥取大学医学部

鳥取大学医学部は「医学科、生命科学科、保健学科がお互いに連携を取りながら、生命の尊厳を重んじるとともに創造性に富む医療人や生命科学者を養成する。」という理念を掲げ、最先端の教育、研究を実践し、多くの研究者・医療従事者を輩出しています。

また、医学部附属病院は地域の中核病院として、高度な医療を提供し、重篤かつ救急な患者さんを受け入れる地域医療の担い手として市内の病院、診療所と連携し、私たちの「安心」に繋がる医療環境を提供しています。また、平成30年1月には、米子商工会議所前から灘町橋までの約860メートルに「医大通り」という道路通称名が命名されるなど、地域の皆さんから「医大」という愛称で親しまれています。

<図>医大通り地図

鳥取大学医学部における基礎研究 ―未来の医学のために―

医学部研究者は、病気の原因や病態の解明などの基礎研究をはじめ、病気の診断や予防方法、新たな治療方法や治療薬、医療機器の開発など、患者さんの生活の質の向上や、健康の増進のための研究を行なっています。

基礎研究は仮説と検証を繰り返す毎日であり、日の目を見るまでに長い時間がかかることが多い一方、その研究成果は私たちに明るい未来をもたらしてくれます。

生命科学科創設という先見の明

鳥取大学医学部は世界的にも傑出した研究成果や、世界唯一の技術を保持しています。この背景には、平成2年に、全国の医学部で初めて「医学」と「生命科学」の知識を併せ持った研究者を育成する「生命科学科」を創設したことが挙げられます。

当時は「生命科学」や「バイオサイエンス(※注1)」という言葉が世間一般にはまだなじみがなく、生命科学の研究者を育成する学科も少ない中での新学科創設でした。

「医学」は、人体の構造や機能、疾病について研究し、疾病を診断・治療・予防する方法を開発する学問です。一方、「生命科学」は細胞生物学や分子生物学など、生物が営む生命現象の複雑で精緻なメカニズムを解明する学問です。

「生命科学探究の成果」を「私たちの健康についての学問(医学)」へ橋渡しができる人材の育成環境を整えたこと、そして人類がいまだ克服できない難病やがんなど、次代に求められる課題克服の一手を先んじて打ったこと。それが、全国に先駆けて医学部の中に生命科学科を創設したことの、米子にとっても誇らしい意義であるといえます。

現在においても、医学部に生命科学科を持つ大学は少なく、世界の医学発展に貢献する拠点として鳥取大学医学部は高く評価されています。

鳥取大学医学部の世界的発見と技術開発

がん患者の死亡原因の約9 割は転移で占められていると言われていますが、転移のメカニズムの詳細は、いまだ解明されていません。このような中、平成29年3月に、生命科学科(病態生化学)岡田太教授の研究グループが世界に先駆け、がん細胞の肝転移を決定するタンパク質を同定(※注2)しました。今後の、このタンパク質をターゲットとした治療や予防に繋がる創薬開発が期待されています。
<写真>病態生化学岡田太教授研究グループの研究風景

世界から注目される技術としては、生命科学科(細胞工学)久郷裕之教授の研究グループを中心に開発された世界で唯一の最先端技術「染色体工学技術」があります。この技術を用いて、新しくがんを抑える遺伝子の発見や病気の病態を解明するための疾患モデル動物の開発など大きな成果を上げてきました。鳥取大学発の染色体工学技術は独自性が高く、開発から約20年を経た現在においても、世界でも他の追随を許しません。この染色体工学技術の特徴の一つを簡単に説明すると、染色体を自在に切ったり、繫いだり、移したりする技術です。

特にこの技術を駆使してヒト、マウス等の動物の染色体から作製した人工染色体は、膨大な情報量を持った特定の大きな遺伝子を取り扱える乗り物として、目的の細胞へ移すことができます。

従来の技術では、比較的小さく、限られた情報量の遺伝子しか取り扱うことができませんでした。従来の技術を「バイク」に例えるならば、染色体工学技術は「大型トラック」のような役割を担います。運べる荷物の量が増えることにより様々な新しいことができるようになりました。

その一例として、現在、人工染色体を活用して、生命科学科(細胞工学)香月康宏准教授の研究グループが、ヒトの抗体遺伝子を持った完全ヒト抗体産生マウスおよびラットの作製に成功しました。この動物から、がん治療等に有効な抗体を作出することが可能となり、精製した抗体を使った医薬品はヒト遺伝子由来であるため、副作用が低減され、高い治療効果が期待されるメリットがあります。このように、鳥取大学医学部が開発した染色体工学技術は画期的なもので、がんや難病に効果のある薬を生み出す可能性を大幅に広げたといえます。平成30年2月に欧州、4月には米国において、日本の製薬企業が世界で初めて、鳥取大学の染色体工学技術を活用した抗体医薬(※注3)を発売しました。この抗体医薬は、慢性の進行性骨格筋障害をもたらす希少疾患(成人又は小児X染色体遺伝性低リン血症)に対して、世界で初めて効果が認められた医薬品です。(日本国内は臨床治験中)

このように、米子で生まれた技術が世界に広がり、次なる抗体医薬が創出され、今後難病が減っていくことに期待が寄せられています。


<図>染色体工学技術のイメージ

バイオ産業の拠点をめざして

米子では、鳥取大学医学部を中心に、バイオ産業の分野が世界へ挑戦できる体制が産官学連携により構築されつつあります。

鳥取大学米子キャンパスにある「とっとり創薬実証センター」は、鳥取大学発完全ヒト抗体産生動物などを用いた創薬実証研究を、製薬会社などと共同研究をする施設として整備され、医学部と連携した研究活動が行なわれています。また、隣接する「とっとりバイオフロンティア」ではバイオ関連企業の創業支援や、初期投資を軽減するための研究機器支援などを行なう拠点となっています。

現在、米子市において、鳥取大学発染色体工学を活用した3つのバイオベンチャー企業が活動しています。製薬会社等が研究に必要なデータ分析やツール開発、抗体医薬等の開発受託など、私たちの未来の「安心」のために、幅広い領域でバイオ産業分野の発展に貢献しています。今後は、鳥取大学発の染色体工学技術を中心に、産官学一体となったバイオ産業の拠点として、雇用創出が期待されています。米子市はできうる限りの伴走支援に取り組みます。


<写真>とっとり創薬実証センター(左)、とっとりバイオフロンティア(右)
以上のように、私たちの暮らす米子において、鳥取大学生命科学科創設に始まるバイオ産業の発展が、世界から注目されています。『未来に向けて大きな可能性を秘めている。』と。  

(注1)バイオサイエンス…
ライフサイエンスという学問の中の一つの分野で、DNAを基盤とした研究を従来の生物学の知識と結びつけ、分子、細胞、組織などあらゆる生命現象を理解しようとする領域のこと。

(注2)同定…
対象としている物質の種類を決定する行為のこと。

(注3)抗体医薬…
病気の原因である物質に対する抗体を人工的につくり、医薬として体内に入れ、予防や治療をおこないます。抗体医薬は、バイオ技術を使ってつくられます。

掲載日:2019年2月12日