第2回 「かかりつけ医」と「病診連携」―わたしたちの安心の仕組み―

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第2回 「かかりつけ医」と「病診連携」―わたしたちの安心の仕組み―

今回は、身近にいて頼りになる「かかりつけ医」の大切さと、「病診連携」について取り上げるとともに、4つの病院(鳥取大学医学部附属病院、山陰労災病院、米子医療センター、博愛病院)の特色を紹介します。

これらの医療環境は米子の地において当たり前のようにあり、日常の生活においてあまり意識することはないかもしれません。そこで、皆さんに「病診連携」の仕組みやその手法を紹介するとともに、私たちの健康を守る充実した医療環境のありがたさを再認識していただき、米子で暮らす安心を感じていただければと思います。そして、より米子市を好きになるきっかけになればと思います。

「かかりつけ医」をお持ちですか?

「かかりつけ医」とは病気になったとき、真っ先に相談したいお医者さんのことで、「かかりつけ医を持つことは大切なこと」と言われています。

私たちが適切な医療を望むとき、普段から何でも気軽に相談できる関係を「かかりつけ医」と築けていれば、ちょっとした頭痛や腹痛が、実は、予想もしていないほど大きな病気だったなど、皆さんの体調の変化に気づくこともできます。

「かかりつけ医」と病院の連携

「かかりつけ医」は、患者さんの健康状態や病状などを把握しています。そして、精密な検査や入院治療が必要な場合や患者さんが希望された場合には、大きな病院の専門医を紹介します。

このように、「かかりつけ医」(診療所)と病院の医師が相談しながら治療を進める仕組みのことを「病診連携」といいます。

身近な「かかりつけ医」に特定の診療科がない場合、他の診療所と連携する「診診連携」や、病院同士の連携「病病連携」も行なわれます。

米子市では、地域の医療機関が互いに連携するとともに、それぞれの機能を分担し、皆さんにとって最適な医療を提供する仕組みが整えられています。

きれめのない医療提供をめざして

鳥取県西部医師会では「もしもの時のあんしん手帳」の利用を推進しています。
あんしん手帳の表紙

この手帳は在宅医療・在宅看取りについて、事前に周囲の方に自分の終末期の希望を知ってもらい、今をよりよく生きると同時に、意思表示ができなくなった時に備えるためのツールです。

また、鳥取県西部医師会と次ページで紹介する4つの病院は連絡協議会を設け、「病診連携」などの医療連携の一層の充実を図っています。その取組みの一つに、「地域連携パス」の活用があります。

地域連携パスとは、患者さんの同意を得たうえで、地域の診療所と病院などがチームとなり、疾病などの情報を共有し、患者さんに最適な医療をスムーズに提供するための治療計画表のことです。

地域連携パスを医療機関で共有することで、大きな病院が精密検査などを行ない、「かかりつけ医」が健康管理を行なうことができたり、重複した検査・投薬を避けたりすることができます。また、患者さんやご家族の方が不安と感じる治療のスケジュール・内容・方針が明確になります。

つまり、地域連携パスを活用することで、地域の医療機関が機能分担を行ない、きれめのない医療提供が可能となります。

休日診療などについては、鳥取県西部医師会による休日および夜間における急患診療所での初期救急患者の診療や、鳥取県西部歯科医師会における歯科保健センターでの休日歯科診療が実施され、2次、3次救急医療(※注1)を担う病院と連携しています。

このように、米子市は、充実した医療施設とともに、医師会と医療機関や医療機関同士が互いに連携し皆さんの健康の安心をサポートする体制が整っています。

今回の企画にあたり、米子市に立地する主要な診療科を持つ4つの大きな病院に紹介文を寄稿していただきました。

 

病院からの寄稿文

リンク 鳥取大学医学部附属病院

リンク 山陰労災病院

リンク 米子医療センター

リンク 博愛病院

鳥取大学医学部附属病院

先進的な医療提供と医療人育成を使命とする

鳥取大学医学部附属病院は、約70年にわたり米子の地で育てられ、地域の皆さんに「医大」の通称で親しまれています。

「医療の実践、医学の教育・研究を推進し、地域の人々と健康の喜びを共有する」ことを基本理念とし、県内唯一の特定機能病院(※注2)として高度先進的な医療を提供するとともに、山陰地方のみならず全国で活躍する医療人を育成する使命を担っております。

人にやさしく、質の高い医療

高齢化が進む山陰地方では、医療の現場においても手術や検査を受ける患者さんの体への負担を減らし、回復を早める取り組みが必要とされています。本院では「人にやさしく質の高い医療」を提供するため、全国の大学病院に先駆けて平成22年に内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入しました。平成23年には低侵襲外科センターを開設し、診療科・職種を越えた横断的チーム医療で安心・安全な治療体制を推進しています。

<写真>内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」

地域医療の担い手育成

地域包括ケアシステム(※注3)の一翼として、訪問看護師育成支援、看護師特定医療行為研修を実施するなど、これからの地域医療を担う人材の育成にも積極的に取り組んでいます。

また、より一層の地域連携を図るため、病院長特別補佐を新たに任命し、行政や地域の医療機関・介護施設等とのネットワークづくりを進めています。

ドクターヘリ運航開始

地域医療の最後のとりでとして重篤な救急患者を受け入れる役割も担っており、今年3月には本院を基地病院とする鳥取県ドクターヘリの運航を開始しました。これにより鳥取県全域から島根県東部、岡山県の山間地域の救急要請に応えることが可能となり、さらなる救命率向上、へき地救急医療や災害医療活動等、「救える命を救う」ことに全力で取り組みます。

<写真>鳥取県ドクターヘリ「KANSAI・おしどり」

山陰の中核病院として、信頼される病院であり続けるために、診療体制の充実と人材育成に努め、より安心して暮らせる地域づくりに貢献してまいります。

 

山陰労災病院

急性期病院(※注4)として病気と就労の両立支援

山陰労災病院は昭和38年に29番目の労災病院として診療を開始しました。その後、幾度かの増改築を経て、現在377床・24診療科を有する急性期病院として地域医療を担っております。

また、少子高齢化が社会問題となっている現在、労災病院グループの使命である働く人々の健康管理と総労働人口の維持に貢献するため、『病気と就労の両立支援』に積極的に取り組むなど、地域の中核的総合病院として社会の要請に応えるべく努力しております。 質の高い医療をめざして 特に救急医療では、昭和50年代から病院群休日輪番制(※注5)に参画するなど積極的に取り組むとともに、高次集中治療室と救急病棟を設置し、質の高い医療を行なっています。

<写真>救急受入れ

平成26年には小児科を開設し、平日・休日および祝日の小児輪番制にも参画しているため、鳥取県西部医療圏における救急搬送の受入件数は鳥取大学医学部附属病院に次いで多く、年間2600件を超えております。

さらに、地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院に準ずる病院として、年間3000件を超える手術を行なっております。

2024年度 山陰労災病院が生まれ変わります

一方、本院は開院から50年以上が経過していることから、現在、2024年度の竣工をめざして増改築工事を進めております。患者さんをはじめ、地域の皆さま方には騒音等でご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、ご理解・ご協力を賜りますようお願いします。

<写真>新病院イメージ

今後も本院の理念であります『信頼・優しさ・安全』に忠実に、地域住民の皆さんから更に信頼される病院をめざし努力して参りたいと思いますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。


 

米子医療センター

「かかりつけ医」と連携2次救急医療機関

米子医療センターは、地域医療支援病院(※注6)の指定を受け、「かかりつけ医」と連携して診療を行なう270床の急性期病院です。専門的検査や入院治療のために本院を受診される際は、「かかりつけ医」の紹介状持参をお願いしています。

先進的な「がん」医療の提供

内科系、外科系の一般的な病気の診断・治療について、専門医による最新の検査手技や高水準の治療法を積極的に取り入れ、治療成績向上に努めています。特色としては「がん」と「移植」医療です。地域がん診療連携拠点病院として、身体のさまざまな部位のがんや、血液のがんに対する手術療法、放射線療法、さらに「化学療法センター」で最新の薬による治療を行なっています。

<写真>化学療法センター

緩和ケア内科で不安や心配、苦痛の軽減をサポート

「がん相談支援センター」ではさまざまな相談に対応し、地域で唯一の緩和ケア病棟の整備も合わせて、万全の体制でがん診療にあたっています。特に緩和ケア内科は、がんと診断されたその時から、不安や心配、苦痛を軽減する心強い味方です。遠慮せずに受診してください。これら各部署では5領域11名のがん関連の認定看護師が診療をサポートし、看護にあたっています。

<写真>がん相談支援センター

移植医療

血液がん治療に関し「幹細胞移植センター」では無菌室を整備し、血液の元となる幹細胞が豊富に含まれる臍帯血移植や非血縁者間末梢血幹細胞移植などを行なっています。「腎センター」では、透析設備を充実させているほか、日本臓器移植ネットワークより腎臓移植施設、移植検査センターの指定を受け、生体腎移植や献腎移植を行なっています。

基本理念である「地域の命を支える」強くて温かくて優しい病院をめざし、医療の提供に務めています。

 

博愛病院

開院97年の歴史

博愛病院は大正10年に現市役所所在地に設立され、今年で97年目を迎える県内でも屈指の歴史を持つ病院です。昭和50年に現住所に移転し、その後の増改築を経て平成14年には現在の姿になりました。53床でスタートした病床数は、現在は199床となっています。

急性期医療から在宅医療まで

本院は、多機能の病床群を有しており、急性期から慢性期までの多様な患者さんの受け入れが可能であることとともに、在宅医療に力を入れております。入院患者さんにスムーズに在宅へ移行いただき、住み慣れた自宅での療養を支援することで、地域へ貢献しています。

多機能の病棟群とは

一般病床(72床)では主として内科、外科、整形外科、婦人科、眼科、小児科領域の急性期の患者さんを受け入れています。回復期リハビリテーション病床(30床)では脳卒中や大腿骨頸部骨折術後などでリハビリテーションが必要な患者さん、地域包括ケア病床(59床)では急性期の治療を終えた患者さんや在宅あるいは施設入所中で一時的な治療を必要とする患者さんなどを受け入れ、在宅復帰支援を行なっています。療養病床(38床)では医療依存度の高い慢性期の患者さんを受け入れています。 

在宅医療の取組み

通院困難な患者さんに対し、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援を行なっています。

<写真>在宅医療センター

定期的な訪問に加え、緊急時には24時間365日体制で臨時の訪問を行なっています。また、必要時には本院へ速やかな入院が可能です。平成29年に、在宅医療の各部門を統合し、在宅医療センターを立ち上げました。介護相談窓口やシニアサロンなどを設置しており、介護拠点としての役割を果たすこともめざしています。将来的には薬剤師、管理栄養士を加え、さらに充実した組織にする予定です。

<写真>訪問診療

 

 

(注1)2次救急医療…
入院治療や手術を必要とする重症患者に対応する救急医療のこと。3次救急医療1次救急や2次救急では対応できない重症・重篤患者に対して行なう医療のこと。3次救急の指定を受けている病院には救命救急センターや高度救命救急センターが設けられ、 24 時間体制で救急患者の受け入れを行なっている。

(注2)特定機能病院
高度な医療の提供、高度な医療技術の開発および高度な医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院のこと。

(注3)地域包括ケアシステム…
高齢者が可能な限り住み慣れた自宅や地域で安心して自立した生活を営めるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスなど、地域における包括的な支援やサービスを提供する体制のこと。

(注4)急性期病院…
急性疾患または重症患者の治療を 24 時間体制で行なう病院のこと。急性期の目安は病気を発症し急激に健康が失われ不健康となった状態で、発症後 14 日間以内が目安とされている。

(注5)病院群休日輪番制
1日2病院による輪番制により、夜間および休日に入院加療を必要とする重症救急患者の医療を確保する体制のこと。

(注6)地域医療支援病院…
医療は患者の身近な地域で提供されることが望ましいという観点から、県が設定した地域で「かかりつけ医」を支援し、医療の充実を図る病院のこと。

掲載日:2019年2月12日