第7回「いきかた(生き方・逝き方)」の可能性・選択肢・それを支える人たち

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第7回「いきかた(生き方・逝き方)」の可能性・選択肢・それを支える人たち

祝・第70回保健文化賞受賞

西部在宅ケア研究会が第70回保健文化賞を受賞しました。

保健文化賞は昭和25年に創設され、厚生労働省等の後援により、保健医療や、高齢者・障がい者の保健福祉、少子化対策などに顕著な実績を残した団体・個人に贈られる賞で、この分野で最も権威ある賞とされています。
西部在宅ケア研究会は、平成12年の介護保険制度の施行にあわせ、医師会・歯科医師会・薬剤師会のいわゆる三師会の後援により発足しました。在宅ケアに関わるさまざまな人たちが、組織や職種の垣根を超えて一堂に会する場をつくることで、医療や介護職だけではなく、10年後20年後を見据えながら、幅広い人材育成のモデルの構築を視野に地域包括ケアシステムの充実に向け活動しています。

保健文化賞を受賞した理由としては、全国でも先駆的に活動を開始し、私たちが暮らす鳥取県西部保健医療圏において、講演会・研修・グループディスカッションなどに延べ約7千人もの在宅ケアに関わる多職種が参画し、医療・ 介護・行政の連携強化が図られ、地域の在宅医療・介護の向上に貢献し続けている点を評価されたことが挙げられます。


<写真>第70回保健文化賞贈呈式の様子

「安心」・在宅ケアを支える人たち

病気やケガ等で入院し、完治するまでずっと病院で過ごす方法以外にも、住み慣れた自宅で生活したいという本人の意思・ご家族の思いと、訪問診療を行なえる“かかりつけ医”の環境が揃えば、在宅療養の選択が可能です。そして、在宅療養という選択肢を考えるとき、本人や家族が抱くさまざまな心配について、支える人たちがいます。
在宅療養を支えるのは、医師、訪問看護師だけでなく、必要に応じてケアマネージャー、リハビリを行なう理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のほか、介護福祉士、ホームヘルパー、薬剤師、歯科医師等の医療介護の専門職、また、保健師や民生委員など多くの方が関わります。このように多くの方が患者さんをサポートし、患者さんと家族が充実した日々を過ごせるように、ちょっとしたことにも目を配り、ご家族の大きな支えとなっています。

医療が生活の中に自然と溶け込む支援をめざして

訪問診療を行なう“かかりつけ医”は、計画的に訪問し、診療、治療、薬の処方、療養上の相談等を行ないます。医師等と連携した訪問看護師は、患者さんの日々の健康チェックや医療器具の管理、薬の管理・指導、介護相談や療養上のアドバイスを行ない、医療が生活の中に自然と溶け込む支援を行なうことで、患者さんとご家族がスムーズに生活できるようサポートします。在宅ケアは病気を治すための医療が主となる入院とは違い、患者さんとその家族が自宅で一緒に暮らしたいという希望を叶えることを念頭において行なわれます。

また、こどもの在宅ケアは、大人の在宅ケアに比べて難しい面もありますが、家でこどもと過ごすことで、家族の一員として、こどもの成長、発達を喜び合うことを大切にしたいという考えから、在宅療養を選択するご家族もおられます。まずは、医師などに、こどもと一緒に過ごしたいという家族の思いを伝えることが大切です。


<写真>訪問看護の様子

自分らしい人生を全うできる社会をめざして

平成12年に介護保険制度が創設されて以来、要介護で介護サービスを利用する人は増加しており、団塊の世代の約800万人が75歳以上になる2025年以降は、高齢者の医療や、介護の需要がさらに増加すると言われています。このような中、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい人生を全うできる社会をめざして、地域の実態に合わせ、「自助・互助・共助・公助」の観点から、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つのサービスを一体的に提供できる包括的な支援・サービス提供体制の構築が求められています。

人生の最期の在り方・気持ちを伝え合う大切さ

厚生労働省の統計によると、約7割を超える方が、病院で人生の最期を迎えています。一方で、自宅で最期を迎えたいと希望する方の割合は約6割という調査(注1)があります。

もしもの時はいつ・誰に訪れるかわかりません。あるいは、やがて訪れるとは理解していても、いよいよその時が迫ってくると自身や家族の方々も平常心でいられなくなるかもしれません。元気な時に、自身の最期をどのように迎えたいか、大切な人の気持ち、自分の気持ちについて話し合うことが大切です。

住み慣れた自宅で家族等と過ごしながら最期を迎える「在宅看み取り」は、訪問診療の“かかりつけ医”や介護医療従事者のサポートだけでなく、ご家族の理解、協力が大切です。一人暮らしでもあらかじめその意思を示して周囲の理解があれば、逝き方を選ぶことができます。

注1…内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年)(調査対象は、全国55歳以上の男女)

もしものとき、大切な人に伝えたいこと

鳥取県西部医師会では、病気や認知症、事故、加齢などで自らの意思を伝えることができなくなる場合に備えて「もしもの時のあんしん手帳」を製作しました。これは、介護を頼みたい人や場所、お金のこと、食べ物のアレルギーや好きな味付け、がんの告知の希望有無、延命治療の希望有無などさまざまな切り口で、本人の思いを伝える冊子です。鳥取県西部医師会が公民館等で行なっている在宅医療に関する出前授業や西部医師会館で配布をしています。また、米子市でも「もしもの時のあんしん終活支援ノート」を製作し、市役所や、地域包括支援センターなどで配布しています。

  
▲鳥取県西部医師会の「もしもの時のあんしん手帳」(左)と米子市の「もしもの時のあんしん終活支援ノート」(右)

まずは好きなページから気軽に、家族と相談しながら書いてもよいでしょうし、何度書き直しても大丈夫です。ノートの存在を大切な人に伝え、保管場所を明らかにしておくとことが肝要です。さまざまな情報をわかりやすくまとめることができるようになっており、テーマに沿って書き進めるうちに、思いも自然と整理できるようになっています。そして、「これからの人生の在り方を考える」きっかけになるかもしれません。

自ら望む療養の在り方や、最期の在り方を前もって大切な人と話し合うことは、私たち自身の豊かな人生につながるのではないでしょうか。

在宅医療をわかりやすくご紹介-動画「わたしたちのいきかた」

昨年、鳥取県が鳥取県西部医師会の協力のもと「鳥取県在宅医療プロモーション動画」を作成しました。高齢者・障がい者・こどもの「在宅医療」や「在宅看取り」等についてわかりやすく紹介しています。

リンク・新しいウィンドウで開きます … 在宅医療で"いきかた"が変わる!広がる!「わたしの いきかた」(YouTube)

掲載日:2019年6月11日