第9回 ミクロの世界と小さな研究者たち

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第9回 ミクロの世界と小さな研究者たち
電子顕微鏡の使い方を子どもに教える様子

電子顕微鏡の開発・発展に貢献した二人の研究者

米子市が世界に誇る二人の研究者をご存じですか?
大阪大学名誉教授の故・菅田栄治さんと、鳥取大学名誉教授の故・田中敬一さんは、私たちの目では見ることのできない非常に小さいものを観察することができる「電子顕微鏡」という顕微鏡の開発や発展に多大な貢献をした研究者です。

菅田栄治さん

菅田さんは、国産第一号となる電子顕微鏡の組み立てに成功し、従来よりも厚みのある試料を観察することができる300万ボルトの超高圧電子顕微鏡を開発しました。この300万ボルト電子顕微鏡は改良を重ね、現在も大阪大学で共同利用されており、国内外から利用希望が殺到しています。

田中敬一さん

田中さんは、試料を立体的に観察できる「走査型電子顕微鏡」の世界的権威で、昭和60年に当時世界最高となる80万倍の走査型電子顕微鏡を開発し、エイズウイルスの拡大写真を世界で初めて撮影することに成功しました。
このようにお二人は、現在もさまざまな研究の最前線で使われている電子顕微鏡の開発・研究に貢献し、医学、工学、化学など、多岐にわたる分野の発展の礎を築きました。

電子顕微鏡の仕組み

そもそも電子顕微鏡は、私たちが思い浮かべる顕微鏡とは少し違います。私たちのイメージする理科室にあるような顕微鏡は、光を利用して観察する「光学顕微鏡」と呼ばれるもので、肉眼よりも小さいものを観察することができまが、電子顕微鏡は、電子線を利用することで、光学顕微鏡では見ることができないDNAやウイルスのような、より小さなものを観察することができる顕微鏡です。電子顕微鏡は大きく分けて二つの種類があります。一つは電子線を試料に透過(通り抜け)させることで試料の内部を観察することのできる「透過型電子顕微鏡」。もう一つは電子線を試料に当てて、そこから反射、または発生する電子を利用して、表面の形を観察することができる「走査型電子顕微鏡」です。

この電子顕微鏡の開発は、科学的な分野の発展に貢献するだけでなく、実は私たちの身近な暮らしに大いに関わっています。例えば、「蚊の針」を観察することで刺されても痛くない低侵襲性(痛みの少ない)の注射針が開発され、「サメの肌」を観察することで水の抵抗を受けにくい表面構造の水着が開発されました。電子顕微鏡の発展によって今まで見ることができなかった生物の微細で優れた構造を知ることができるようになったことで、私たちの暮らしをより豊かにしてくれるさまざまなものが発明され、今後もその可能性に期待が寄せられています。

身近にあります!ミクロの世界への入り口

昨年、「電子顕微鏡のまち・米子市」推進協力会から米子市に電子顕微鏡を二台寄贈していただきました。米子市ゆかりの研究者お二人の功績をたたえるとともに、子どもたちが気軽に電子顕微鏡に親しめるようにという思いをこめて、米子市児童文化センターに設置しています。一台は田中先生が実際に使用されていたもので、もう一台は簡単に操作ができる最新型の電子顕微鏡であり、実際に試料を観察することもできます。

さらに、電子顕微鏡をより身近に感じることができるように、有志の先生方のご指導やご協力のもと、市民の皆さんが実際に電子顕微鏡を使うことのできるイベントが随時開催されています。このイベントを通して、これまでに多くの子どもたちが自分の観察したいものを持ち寄り、電子顕微鏡でさまざまなものを観察してきました。こうして″小さな研究者”の皆さんが電子顕微鏡に触れ、生活に身近なものを観察することで、普段は見ることのできないミクロの世界を体験しています。

このように、電子顕微鏡を身近に感じられるまち米子は、子どもの頃から最先端の研究機器に触れることができ、科学への関心を育むことのできる、他にはないまちです。電子顕微鏡に触れた″小さな研究者”の皆さんが、未来の科学界をけん引し、世の中の安心や、ワクワク感を創り出してくれることを楽しみにしています。

電子顕微鏡を使いたいかたへ

米子市児童文化センターに設置されている電子顕微鏡は、自分の見たいものを数万倍まで拡大して観察することができます。講師の先生と一緒に観察しますので、使用をご希望のかたは、事前に米子市児童文化センターまでお申し込みください。

申込先

米子市児童文化センター
電話:34-5455
毎週火曜日休館

小さな研究者たち

イベントの様子

今回は、地域の取り組みとして電子顕微鏡のイベントに参加された、福生東青少年育成会の″小さな研究者”の皆さんにお話を伺ってきました。

クローバーの表側と裏側

クローバーの葉の表面40倍クローバーを観察したお子さん

クローバーにどんな模様がついているのか見てみたかったので、観察しました。観察してみると、ちょっと気持ち悪かったけど、面白かったです。

桃の皮の表側

桃の皮を観察したお子さん桃の皮40倍

テレビで、桃を頬ずりすると痛いというのを観て、調べようと思いました。観察してみると、いっぱい細かい毛があってすごいと思いました。今度は表面がツルツルな果物を観察したいと思いました。

水晶の表面

水晶の表面1000倍水晶の表面を観察したお子さん

水晶は綺麗だから、観察してみようと思って選びました。観察してみると、もっと平べったいかと思ってたけど、思っていた形と違ってました。もっと他のものも観察してみたいと思いました。

掲載日:2020年2月3日