みそなめ地蔵さん
…昔、ある寺に和尚さんと小僧さんがおったげな。ある日、2人はみそをつくろうと思うて、大きななべに豆をえっとこ煮たてぇもんだ。2人とも柔らこうに煮えたみそ豆が食べとうてな。豆が煮えると、和尚さんは大きな茶碗に山盛りにみそ豆を入れて、小僧さんに見つからんようにこっそり食べよう思うて、どこで食べるか考えた。そうだ、センチ(便所)なら見つかるまい。和尚さんは臭いのを我慢して入った。
ところが、小僧さんは小僧さんで和尚さんに見つからんように、みそ豆を食べる場所を考えて、これまたセンチに入った。見ると、先客の和尚さんが美味そうに食べとる最中だ。小僧さんは、慌てて自分が持っていた茶碗いっぱいのみそ豆を和尚さんに差し出いて「ハイ和尚さんお代りを持ってきました」と言ったげな…
みそは、水に漬けふやかした大豆を煮て柔らかくしたものに麹を混ぜ、塩を加えて搗き、樽に仕込んで発酵させ、でき上がりです。昔は糀町で麹を買って帰って自分の家でみそをつくったものでした。
寒い今時につくると、雑菌が入らないので美味いみそができました。お互いに自分の家のみそを自慢しました。「手前みそ」です。調味料であり、副食物であり、貴重なたん白源でもありました。
みその主成分の大豆はまた、節分の豆・雛あられ・豆占などに使われる霊性あるもののためか、お地蔵さんに願をかけ、その願いがかなうと、感謝のしるしとして地蔵さんにみそを付けました。願いがかなわないと地蔵さんが「みそを付けた」ことになります。いずれにしろ「みそなめ地蔵さん」です。
米子では車尾の梅翁寺入り口にある地蔵さんが有名で、この地蔵さんは地元の旧家のご先祖が、夢のお告げで日野川から掘り出されたと伝えています。夏の地蔵盆には、みそを塗って供養されています。昔はこの地蔵さんの前で盆踊りもされましたが、歌の下手な人は歌うことができなかったと思いますよ。なぜかって?それは「みそが腐る」からです。

梅翁寺参堂にある「みそなめ地蔵」
平成15年2月号掲載
掲載日:2011年3月22日