大きな大根
ロシアの民話で、小学校の教科書に載っている話です。
…おじいさんが「甘い大きなかぶ(蕪)なれ」といってかぶの種をまきました。
秋になると、甘い大きなかぶができたので、おじいさんがかぶを抜こうとしますが抜けません。おじいさんはおばあさんを呼んできますが、抜けません。おばあさんは孫を呼んできますが、抜けません。孫は犬を、犬は猫を、猫はねずみを呼んできます。ねずみは猫を、猫は犬を、犬は孫を、孫はおばあさんを、おばあさんはおじいさんを、おじいさんはかぶを引っ張ります。「うんとこしょ、どっこいしょ」やっとかぶが抜けました…
米子にも大きな大根の話があります。それはこうです。
…むかし、勝田村(今の勝田町)に、近くの人がいつもゴミを捨てる畑があった。
ある年、その畑に大根が一株生えだした。この大根、どんどん大きゅうなって、なんぼでも大きゅうなる。「いや、こりゃあ大根の化け物だ」ていううわさが立って、その畑の前の道をだぁれも通らんようになってしまった。おまけに亥ノ子さんの日(旧暦10月亥ノ日のこと。今年は11月15日と27日)に大根畑に入って、大根のはしれる(割れる)音を聞こうものなら死んでしまう、と言われとるけぇ、いよいよ人が寄り付かん。それでも大根は大きゅうなる。
「こりゃあ困った事になったぞ」と村中で話をしとったところが、村の元気のいいどひょうし者が「よし、おれがその化け物大根を叩きめいじゃる」といってカケヤの大きなのを持って行って、大根の頭を叩いたそうな。そげしたら大きな穴があいて、中のほうで何だやらガヤガヤ話声がする。「エエイ!中に入ってみちゃれ」いって、その若者が大根の中に入ったらケ、大工さん・木挽きさん・石工さん・左官さん等が忙しそうに働いとる。「はて、こりゃあどげした事だ?」と頭領に聞いたところが、頭領が言うには「どげした事だ、言うてお前、来年の春までには搭を建てにゃあならんで、みんな忙しゅうしとるだ。お前じゃまだけえ、早よ帰れ」いうことで若者は追い帰されただと。ほんにそげ言やあ春になると大根にもトウがたちますけんなあ。ハッ、ハッ、ハッ…
さあ、トウが立ってしまわん内に、事を急ぎましょうぜ。

勝田町にある畑
平成14年11月号掲載
掲載日:2011年3月22日