龍の秘密
明けましておめでとうございます。20世紀最後の年は、干支にあやかって天に昇る龍のように勢いのある、良い年になることを願っています。
「天に昇る龍」と言えば、こんな話が記録に残されて伝えられています。
「米子城の南に総泉寺という寺がある。 昔、この寺に一匹の小さな蛇がいたが、ある時、その蛇が寺の水がめの中に入って、そこから天に昇って龍になった、という」
実はこの話『龍の秘密』という昔話の一部が伝わったものと思います。その話とは
…昔、貧乏な男が殿様の命令で、山に桑の木を伐りに行ったところ、木の根元に蛇がとぐろを巻いて寝ていた。男は思わず大声をあげた。蛇は驚き、仙人に姿を変え、「蛇は山で千年、海で千年、野原で千年修行をすると天に昇って龍になれるが、その間に人に見られると天に昇れない。わしはあと一日で三千年修行したことになるが、今日お前に見られてしまった。また一からやり直しては寿命がない。どうか今日ここでわしを見たことは黙っていてくれ。約束してくれれば、お前の家から天に昇る姿を見せてやるし、必ずお前の家を金持ちにしてやる」と言った。男は一も二もなく承知した。蛇は天に昇る日と、その日の朝、庭に水がめを出しておくように、と言って消えた。
その日は朝から雨が降っていた。男は障子の透き間からこっそりと見ていると、降る雨の水煙に巻き込まれるようにして、蛇は天に昇っていった。
それから後、男の家は、日照りの年でも彼の田だけは水に恵まれて豊作になるし、不思議にいい事ばかり続いて、いつの間にか村一番の大金持ちになっていた。
ある日、男は酒の席で気が緩んだのか蛇との約束を破って、秘密をしゃべってしまった。その翌朝、男の家の前に小さな蛇が死んでいた。 間もなく男の家は、元の貧乏に戻ってしまっていた…
せっかく苦労して天に昇り龍になっても、秘密があれば落ちてしまいます。秘密のない良い1年だったと言えるような年にして、21世紀にバトンタッチしたいものです。
龍の伝説がある愛宕町「大龍山 総泉寺」
平成12年1月号掲載
掲載日:2011年3月18日