大崎・岩屋の盤石
弓ヶ浜半島は、海流に乗って運ばれた砂が積もってできた半島だから、半島全体がさらさらとした砂地でできとるだろう、と思っとられるかも知れませんが、そんな砂地ばかりでできているわけではありません。
硬い岩が数個、民家の庭先に露出している所があります。それが大崎にある「岩屋の盤石」といわれる岩です。何でも火成岩という岩質だそうで。
昔、砂の上に出とるこの平らな岩を掘り出そうとして、人夫さんを頼んで掘られたそうです。ところがあんた、掘っても掘っても、なんぼ掘っても根があるので、とうとう掘り出すのをあきらめた、と聞いとります。(いや掘り出せる、という人もいますが、掘り出せたら話が次に進まん。)
なんでもこの岩は、漁場として知られた美保関のゴゼングリ(礁)と、和田の沖のワダグリをつなぎ、安来の亀島につながる大岩盤の一角ではと言われとるそうです。 このラインのところで、大昔は半島が切れていて、境港側が『出雲国風土記』に書かれている「夜見島」になっとったのでは、という話もあるそうですよ。
この岩盤が地表に出ている村、という意味からでしょうか、それともこの地に昔、古墳があったのでその意味からでしょうか、大崎は昔、岩屋村ともいったと言います。岩屋村は栄えた村だったようで「麦垣(現境港市)千軒、岩屋千軒」と言われたそうで、和歌でも
千早振る 神代の岩屋 動きなき めぐみにめぐる 大崎の里
と歌われたそうですよ。え?この歌を詠んだ人?さあ、それは聞いとりません。
この盤石の上に、小さな祠が祀ってありまして、この祠の神さんは歯痛を治してくれる神さんだ、と言われとります。軟らかい砂地の中にある硬い岩は、ちょうど軟らかい歯茎に生えた硬い歯を連想させて、なるほどこの祠を拝めば、痛い歯も治りそうな気になるでしょうが。
6月4日はム(6)シ(4)歯で、この日から歯の衛生週間が始まります。よい歯は健康の基。大崎の盤石の神さんよろしゅうに頼みます、と入れ歯をガチャガチャさせながら願っとりますだ。毎日。
大崎の民家にある岩。砂地の庭の中に5、6か所顔を出している
平成10年6月号掲載
掲載日:2011年3月18日