見ザル・言わザル・聞かザル
…昔、堅い畑を懸命に耕す爺さんがいた。あんまりえらいので、つい「あーあ、わしに代わってこの畑を耕してくれる者がおれば、3人おる娘の1人を嫁にやるだになぁ」とぐちった。それを山から降りて畑にいたサルが聞いて「爺さん、今の話は本当かや?」と聞いた。「ああ本当だとも」というと、サルは爺さんの鍬くわを引ったくるや、どんどん畑を打ち、見るまに耕してしまった。爺さんは、しまった、と思ったがもう取り消せない。
畑から戻って布団に潜り込んでしまった爺さんに、上の娘が心配して聞くと「病気ではないが、サルの嫁になってくれんか」と頼むと「そげな者の嫁には、ようならん」いって出てしまった。中の娘が心配して来たので、同じことをいうと「姉さんが嫌な者は、わしも嫌だわい」いって出てしまった。下の娘が心配して来たので、同じことをいうと「ああいいよ、約束したのならわしが嫁になるけえ、爺さん元気だして」といった。爺さんは安心した。
嫁入りの日、サルは喜び勇んで嫁迎えに来た。娘はみやげに石臼をもらって、サルの婿にそれを背負ってもらって山の家に嫁入りして行った。途中、小川の岸辺に桜の花がきれいに咲いとった。サル婿は花嫁を喜ばそうと思って、枝に手を伸ばしたはずみに自分が川に落ちてしまった。なにしろ重たい石臼を背負ったままなので、おぼれて死んでしまった。娘は実家に帰ってきて、それからずっと親孝行したと…
「サルの婿入り」という昔話です。
サルも爺さんの話を聞かなんだら、「嫁にくれ」と言わなんだら、桜の花を見なんだら、よかったのにかわいそうなことでした。というのは昔話の中のサルの話でして、人間様はよく見、よく聞き、よく話してもらわねばなりません。
写真の三猿像は、総泉寺入口にある石像です。今年はサル年であり、また「1月はイヌル、2月はニゲル、3月はサル」と言いますので、今月はサルの話です。え?サルの意味が違うって?こりゃまた失礼したでござる。

総泉寺入口にあるサルの像
平成16年3月号掲載
掲載日:2011年3月22日