社日さん
昔話にこんなのがあります。
…昔、姑さんが嫁さんに「あしたはヒガン(彼岸)だけんな、仏さんにぼた餅つくって供えてごせ」 いうて頼まさったら、嫁さんが 「おかあさん、ヒガンじぁないヒイガンだ」 「それは違うヒガンだ」 「いやヒイガンだ」と言い合いになった。腹を立てた姑さんは、お寺に行って和尚さんに聞いた。 「和尚さん、うちの嫁は彼岸のことをヒイガン言いますが、ヒガンが本当でしょうが?」 和尚さんはそこで「明日嫁さんと一緒に寺に来なさい、教えたげるけえ」と言いなさった。
次の日、二人そろってお寺に行った。和尚さんの言われるには「彼岸ちゅうもんはな、一週間のもんだ。それで、おかあさんの言うヒガンは前の三日、嫁さんの言うヒイガンは後の三日、中の一日が中日だ」と言わさんしたと…
この中日にいちばん近い戊(ツチノエ)の日を「社日」と言います。彼岸の中日は春秋ありますので社日も年2回あります。ちなみに今春の社日の日は中日の21日になります。
社日さん、とは土の神(地神ともいう)のことであり、秋の実りをもたらしてくれる神と言われています。この日は田や畑に出て土をうごかしてはいけない、と言われていました。他地方では、春の社日に山の神が田の神になられ秋の社日に山に帰られる、とも言うそうです。社日さんの信仰は、大昔に中国から伝わったと言われています。
春分過ぎて日一日と昼時間が延びるにつれ、忙しい野良仕事に取りかかる時期になります。種をまき、実りをもたらしてくれるには土の神の助けが必要だ。そこで農繁期に入る前に土の神を祭ろう、と言うのが社日さんの意味だったと思われます。江戸期の「臼ひき歌」に「二季(春秋)の社日に田畑の神を祭りゃ穂に穂が咲くと知れ」とありますように。
米子ではこの日、地祭といって灘に出て潮水と浜砂を社日さんに供えて五穀豊じょうを祈願していました。その社日さんの五角形石塔が旗ヶ崎や青木神社や粟嶋神社などに残っています。
旗ヶ崎3丁目にある社日塔
青木神社の社日塔
平成14年3月号掲載
掲載日:2011年3月22日