令和3年6月17日、米子市議会6月定例会での市長の施政方針です。
私は、去る4月18日に執行されました市長選挙におきまして、2度目の当選を果たすことができ、引き続き米子市の市政運営を担うこととなりました。コロナ禍の中で迎える2期目のスタートであり、改めてその責務の重大さを痛感いたしますとともに、市民の負託にこたえるべく、本市発展のため、この身を賭す覚悟でございます。
米子は、日本海と中海、そして大山に囲まれた自然豊かなまちであり、山陰の交通の要衝という地の利や、充実した医療や介護環境を有し、さらには人々の開放的な気質と相まって、21世紀に燦然(さんぜん)と輝く魅力あふれるまちとなる潜在力を秘めています。そして、コロナ禍により、地方都市の暮らしが見直されている今こそ、この豊かな自然や暮らしやすさといった米子の良さを活かしたまちづくりを積極的に進めていくことが重要です。
「住んで楽しいまちづくり」これがすべての政策に通じる私の政治理念です。
この自然の豊かさという恩恵を最大限に活かし、それを市民の暮らしや生業へとつなげていくことで、「このまちで仕事に遊びに人生を存分に楽しんでいただきたい。」そのようなまちづくりの理念を市民の皆様と共有しつつ進めていきたいとの思いから、昨年、「住んで楽しいまちづくり」をテーマとする「米子市まちづくりビジョン」を策定し、様々な施策に取り組んでまいりました。そして、本市の持つ魅力を活かしながら、まちなかも郊外も米子市のすべての地域において、それぞれの地域が持つ様々な可能性を開花させていきたいと考えております。
しかしながら、昨年来、世界で新型コロナウイルス感染症が猛威を奮い、人々の生活や経済活動など様々な面で制約が生じ、今なお、大きな影響を受けています。わが国においては、少子高齢化と人口減少の進展、デジタル化の加速や新たな環境目標の導入など、社会経済情勢は予想を上回るスピードで変化しています。さらに、2040年頃には団塊ジュニア世代が高齢化することにより、高齢者人口がピークを迎え、労働力不足と相まって、世代間のバランスが最も崩れるものと推計されています。ピーター・ドラッカーの言葉を借りれば、これらは「すでに起こった未来」であり、想定される様々な課題に対し、バックキャスト、つまり未来を起点とした発想による対応が求められています。
私たちは、今まさに、こうした時代の変化に的確に対応し、地域の発展を成し遂げ、市民を幸福にするという大きな目標に挑んでいます。そのために、市役所職員が今いちど公務員の原点に立ち返り、公に奉仕するということの喜びと誇りを胸に、市民の期待に応えていくことが求められていると考えております。
こうした挑戦を進める上でも、今、全力で取り組まなければならないことが、新型コロナウイルス感染症対策です。これまでの度重なる感染拡大により、地域社会に多大な影響が及んでいることから、感染予防対策や地域経済の下支えなど切れ目のない支援策を講じていくとともに、特にワクチン接種は感染症の収束に向け最も有効な手立てであることから、最重要事項として全庁をあげて迅速かつ円滑に進めてまいります。引き続き、感染状況や市民生活への影響に応じて機動的に対策を講じ、一日も早く、元の平穏な市民生活を取り戻すことができるよう努力していく所存です。
これらの情勢を踏まえ、私が公約に掲げました七つの政策の柱に沿って、当面の諸課題について、次に述べますとおり重点的に取り組んでまいります。また、6月補正予算の概要につきましても、それぞれ政策の柱に併せてご説明申し上げます。
はじめに、一つ目の柱「交通基盤の充実と歩いて楽しいまちづくり」でございます。
本市のまちづくりについては、米子市まちづくりビジョン及び米子市都市計画マスタープランでお示しした基本的な方針等を踏まえ、まちなかと郊外の一体的な発展に寄与する主要な事業について「新商都米子のまちづくり2021」として整理したところです。商都米子の発展の礎となった交通の結節点としての本市の特性を充実させ、中心市街地や皆生温泉等、まちなかのにぎわいを創出する一方で、充実した交通基盤を活用して郊外の住宅地や工業団地等を有機的に結び付け、市域全体の一体的な発展を図り「新商都米子」にふさわしいコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりを推進していきたいと考えております。
そのために、山陰の交通の結節点にふさわしいインフラ整備を促進するとともに、公共交通の利便性を向上させ、「歩いて楽しいまち」をめざし、次の取組を進めます。
まず、高速交通網の整備促進についてですが、昨年度開催された中海・宍道湖圏域道路整備勉強会において、米子・境港間高規格幹線道路の重要性が改めて確認されたところであり、早期事業化に向けた具体的な検討が進められるよう関係団体とともに精力的に要望活動などに取り組んでまいります。また、中国横断自動車道岡山米子線の全線4車線化の早期実現、山陰道の未整備区間及び付加車線設置区間の早期整備についても、国等への働きかけを継続してまいります。
また、中国横断新幹線(伯備新幹線)及び山陰新幹線の整備推進についてですが、関係自治体や関係団体とともに国への要望活動等を実施し、両新幹線の整備計画線への格上げについて、強く働きかけてまいります。
次に、公共交通の利便性向上への取組と交通体系の確立についてですが、ダイヤ調整やバス路線の再編に向けた取組を進めることで、利用者の利便性向上を図るほか、公共交通利用者に対する支援等による利用促進に取り組み、持続可能な公共交通体系を構築してまいります。また、米子市循環バス(だんだんバス)について、新たなルートの実証運行を行なうほか、路線バスの利用者の分かりやすさと利便性向上のため、一部のバス停留所について名称変更を行ないます。このほか、利用者の裾野を広げるため、新たに「ノーマイカー推進事業」を実施するほか、スマートフォンを用いた電子チケット運用基盤「Y‐MaaS(ワイマース)」の実証実験を行ってまいります。
次に、米子駅周辺整備の推進についてですが、本年3月にJR米子駅南北自由通路等整備事業の本体工事に着工したところであり、令和四年度末の事業完了をめざし、進捗を図ります。また、米子駅周辺の活性化を図るため、駅北広場の再整備について関係機関との協議、調整や市民等からの意見を反映した上で、本年度中に基本計画を策定し、令和五年度の工事着手をめざします。
次に、歩いて楽しいまちづくりの推進についてですが、これまでの中心市街地活性化の取組を発展させた施策として、国、県、その他の関係団体をはじめ民間事業者とも連携を図りながら取り組んでまいります。米子駅周辺、角盤町周辺、米子港周辺において、道路空間をまちの活性化に活用すること等により「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成をめざしてまいります。角盤町エリアにおける集客性の高いイベントの開催や商店街の空き店舗を活用する事業等に対する支援により、街の魅力と集客力を高め、イベントと公共交通利用の連携、ハード事業とソフト事業の連携等に取り組むことでにぎわいの創出を図ってまいります。また、米子港周辺において、中海・錦海かわまちづくり計画により親水空間を活かした緑地等を整備し、米子港を中心とした歩いて楽しめる散策コースの確立や、まちと河川が交わる港湾の立地条件を有効活用した地域の活性化を図ります。
次に、パークマネジメントの検討についてですが、都市公園の有効活用に向けて、本年3月からサウンディング型市場調査を実施しており、その結果に基づき、各公園ごとに利用ニーズに応じた施設整備やそれに適した維持管理手法、規制やルールの見直しを検討していきます。
次に、二つ目の柱「災害に強いまちづくりと脱炭素社会への取組の推進」でございます。
地域の防災活動を促進し、「逃げ遅れゼロ」をめざして災害に強いまちを創るとともに、美しい自然環境を後世に残しつつ、経済活動との調和を図る脱炭素社会を見据えて次の取組を進めます。
まず、地域の防災活動を通じた地域づくりについてですが、市民への防災意識と防災知識の普及啓発や、自主防災組織の活動充実を推進し、地域防災力の更なる向上を図ってまいります。また、今年度からは、これまでの自治会単位の自主防災組織に加え、地区単位の連合組織の結成促進と強化育成に取り組み、防災活動を通じた地域づくりの進展を図るとともに、住民参加による各種訓練の実施により、総合的な防災対策を推進してまいります。また、災害時の的確な避難行動につながるよう、防災行政無線や防災ラジオなどを活用した災害情報の提供に努めます。避難所運営につきましては、災害時における感染症予防対策を念頭に、各機関との連携などによる危機管理体制の強化を図り、円滑な避難所運営を行なうことができるよう職員の研修や訓練に取り組んでまいります。また、防災資機材の購入など、自主防災組織の育成や少年消防クラブの活動に対して支援を行ないます。また、災害時における迅速でより衛生的なトイレ環境を確保するため、新たにマンホールトイレを整備してまいります。このほか、原子力災害の際の一時集結所である住吉小学校について、住民避難用の大型バスのアクセス向上のため、前庭部分の整備などを行ないます。
次に、福祉避難所の充実についてですが、配慮が必要な方が安心して避難行動をとることができるよう、引き続き災害協定等による受入先避難所の拡大を図るとともに、災害時に円滑な避難ができるよう要配慮者及び受入施設との連携強化を図ってまいります。
消防団活動の充実と団員数の確保についてですが、地域の防災拠点である消防団車庫の建替と消防ポンプ自動車の更新を順次進めるとともに、消防団員の装備の充実や処遇改善を図りながら団員の確保に努めてまいります。
なお、防災・減災に関する取組は、ソフト・ハード両面で多岐にわたるため、部局を横断した体制を整え、庁内の情報共有と連携を強化し、治水や地域防災力の向上などを通じて「災害に強いまちづくり」を一層進めてまいります。
次に、公共インフラ施設の整備についてですが、まず、市道安倍三柳線2工区の整備については、事業の進捗を図るため、国の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に位置付けていただくよう、精力的に要望活動に取り組んでまいります。
次に、橋りょうの老朽化対策についてですが、国の新たな補助制度を活用し、米子市橋りょう長寿命化修繕計画に基づき補修を進めてまいります。また、浸水被害の解消についてですが、緊急性の高い大篠津地区、車尾地区などの河川改良工事を引き続き実施し、以降も年次的に改良を進めてまいります。また、新たに、新山地内の急傾斜地について、保全すべき人家の安全な生活を確保するため、斜面の崩壊を防ぐ対策事業に着手してまいります。
公園施設長寿命化事業についてですが、湊山公園管理事務所の改築及び各公園の遊具更新を順次行ってまいります。あわせて、米子港周辺や下町観光などの環境整備として、湊山公園の公衆トイレの改築を行ないます。
次に、脱炭素社会に向けた取組の推進についてですが、本市には大規模再生可能エネルギー施設が多く立地するほか、未利用エネルギーの活用やごみの減量化、リサイクルの推進など、脱炭素社会の実現に資する数々の取組を行っており、更に本年2月には2050年までに温室効果ガス実質排出ゼロをめざすことを表明の上、取組を加速させているところです。エネルギー政策など、今後の国の動きを踏まえつつ、地域における取組の推進によって経済活動を維持し、持続可能で活力ある地域社会を実現するため、効率的なごみ処理方法の検討などをはじめ、市民や事業者と連携、協力しながら脱炭素社会の実現に向けて取り組んでまいります。
次に、総合的な住宅政策の推進についてですが、低所得者や高齢者等の住宅確保要配慮者の居住の安定確保のため、新たに民間賃貸住宅の空き家・空き室を活用するセーフティネット住宅供給促進事業に取り組んでまいります。
また、空き家対策の推進についてですが、現在の空き家対策を推進する上での課題解消に向けた関係法令の整備について国に対し強く要望するとともに、新たに空家が発生することを防ぐための啓発活動など、より実効性の高い空き家対策に取り組んでまいります。
そのほか、ヌカカ対策についてですが、これまで行ってきた発生抑制対策のモデル事業の成果を踏まえて、地域で継続的に実施可能な対策を進めてまいります。
次に、三つ目の柱「市民が主役の共生社会の構築」でございます。
地域活動の原動力である市民パワーを引き出し、多様な人々が活躍できる共生社会を創るため、次の取組を進めます。
まず、地域の自治活動の充実についてですが、人口減少が深刻化し、高齢者人口がピークを迎える2040年を見据え、地域におけるさまざまな課題に対応するための将来構想をつくるとともに、地域共生社会の実現に向けて具体的な取組を推進してまいります。また、自治会活動への支援についてですが、活動で使用する集会施設や設備、備品の整備に対し、経費の助成を行ってまいります。
地域の実情に応じたまちづくりについてですが、本格的な人口減少社会の到来を見据え、人口減少が先行する美保地区において、地域の方々が参加するまちづくり協議会により、学校をはじめとする地域の公共施設のあり方や地域活性化等の地域振興策について意見交換を行ない、持続可能な地域づくりに取り組んでまいります。
次に、包括的な相談支援体制の構築についてですが、社会情勢や個人の暮らし方の変化に伴い多様化する福祉ニーズに対応するため、令和4年度に総合相談支援センターを設置することとしており、同センターを拠点として、市民の皆様のあらゆる生活課題の相談を受け止め、関係機関と協力しながら、適切な支援を届けるための体制を整備してまいります。
次に、障がい福祉の充実についてですが、障がいのある方が住み慣れた地域で安心して暮らすことができる共生社会の実現に向け、長期入院中の方の地域生活への移行を進めるとともに、障がいのある方の生活を地域全体で支えるため、地域生活支援拠点を整備するなど、相談体制や障がい福祉サービスの提供体制の充実に取り組んでまいります。また、障がいのある方が地域で必要な支援を受けながら、自己実現できるよう取り組むとともに、障がいへの理解が進むよう取組を進めてまいります。また、精神障がい者にかかる特別医療費の助成制度について、対象者を現行の精神障害者保健福祉手帳1級所持者に加え、2級及び3級所持者にも拡大し、障がい者の健康保持及び負担の軽減を図ってまいります。
次に、鳥取大学医学部並びに附属病院、米子高専との連携推進についてですが、本年3月に医学部附属病院との間で、地域に根差した医療の発展及び持続発展する福祉のまちづくりの実現に向けて連携協定を締結し、これまでに培った協力関係を更に確固なものといたしました。引き続き、共同事業やトップミーティングを行なうなど、より一層の連携強化を図ります。米子高専においても連携プロジェクトでの市のPR動画作成やまちづくりの提言をいただくほか、専門的な知識・技量を活かした地域の課題解決への取組を通じて連携を深めてまいります。
次に、動物愛護活動への支援についてですが、人と動物が共に生きていける社会の実現のため、県と連携し、動物愛護の精神とモラルやマナーなど適正な飼養の周知啓発に努めるほか、飼い主のいない猫の不妊去勢手術の推進やこれらに関連する事業についても関係者と連携の上、取り組んでまいります。
次に、拉致被害者の早期帰国の実現についてですが、早期解決に向け、継続して国・県への要望活動を行なうとともに、拉致被害者が帰郷された際の受入態勢の整備を図ってまいります。
また、人権尊重都市よなごの実現をめざして、人権教育と啓発に努めることにより、互いの人権を尊重し合うまちづくりを推進するとともに、新型コロナウイルスに関する人権侵害を防ぐための啓発にも取り組んでまいります。
次に、広域連携によるまちづくりについてですが、中海・宍道湖・大山圏域の市町村と連携し、圏域の地域資源や優位性をいかすとともに、圏域の一体感の醸成と連携の強化を図りながら、産業や観光の振興、環境保全対策の充実など様々な取組を行っており、引き続き圏域の一体的な発展や地方創生をはじめとする共通課題の解決に向けた取組を推進してまいります。また、本市の行政運営を円滑に進めていくためには、国や県などの関係機関との連携が不可欠であり、国や県などの計画、施策、事業に関する正確かつ迅速な情報収集や情報交換をより積極的に行ない、本市の施策との整合を図るとともに、要望活動等についてもより一層の力を注いでまいります。
デジタル・トランスフォーメーションの推進についてですが、新たに「米子市デジタル・トランスフォーメーション推進本部」を設置し、市民サービスの向上と事務の効率化の両方を実現するための取組を全庁体制で進めてまいります。8月には新たに電子申請を導入し、10月にはスマート窓口を開設するほか、その基盤となるマイナンバーカードの普及・促進にも取り組み、業務や手続きの省力化・効率化を通じた市民サービスの向上をめざして取り組んでまいります。
そのほか、保定市との友好都市締結30周年を記念して、コロナ禍の収束状況等を見極めつつ、交流事業等を行なうこととしております。
次に、四つ目の柱「教育の充実と子育てしやすいまちづくり」でございます。
子どもたちの多様な価値観を養い、全ての子どもたちの可能性を最大限に引き出す教育を推進するとともに、育児相談や切れ目のない支援を充実させて、子育てしやすい環境を創るため、次の取組を進めます。
まず、子どもの特性や発達に合わせた適切で切れ目のない支援の充実についてですが、全ての子どもが安心して健やかに成長できるよう、本市の子どもに係る福祉保健施策と教育施策を一体的かつ総合的に推進し、家庭、学校、地域等、様々な主体が力を合わせて子どもの成長過程全体を支える新たな体制を整えてまいります。あわせて、教員の教育施策以外の負担を極力減らし、GIGAスクール構想への取組など、現在行なわれている新しい教育課題に、より一層、注力できる体制をめざします。また、それに伴い、関係施策をより効率的に推進するため、関係部局を一体として配置することとし、ふれあいの里の1階全体と2階の一部についてレイアウト変更を中心とした改修工事を実施することとしております。
待機児童の解消と子育て支援の充実についてですが、安心して子どもを産み、育てられる環境づくりの観点から、保育所やなかよし学級等の待機児童の解消に努めるほか、公立保育所統合建替え構想に基づき、計画的に統合建替えを進め、保育環境と地域の子育て支援の充実を図ります。なお、本構想により統合して設置する「箕蚊屋保育園」を整備する米子福祉会に対して、施設整備費の助成を行ない、保育環境の充実を図ります。
また、子育て世帯の経済的な自立を支援するため、新たに「自立支援教育訓練給付事業」を実施し、ひとり親家庭の母または父が就職に際して必要な技能や資格の取得ができるよう支援してまいります。
そのほか、ヨネギーズ不妊治療応援事業において、ニーズの高い不育症治療に対する補助制度を新たに設け、経済的負担の軽減を図ります。
次に、ふるさと教育の推進についてですが、ふるさと米子に学び、ふるさとへの愛着や誇りをもつ人材の育成を図るため、米子の豊かな自然や歴史、文化遺産、先人の業績等を学ぶ、ふるさと教育の充実を図ってまいります。また、その実践に当たっては、社会参画意識の醸成を図るとともに、キャリア教育や高等学校、地元企業、民間団体などと連携した取組を行ないます。
次に、多様な学びの機会の確保についてですが、新たに不登校児童生徒に関わる学習支援員の配置と教室等の環境整備を行なうことで、個々の児童生徒の実情に応じた支援の充実を図ってまいります。また、不登校児童生徒や保護者の中には、学校復帰への抵抗感や学校以外の場で教育を受けることを希望される場合もあることから、民間のフリースクールの利用を支援してまいります。
インクルーシブ教育の推進についてですが、子どもの特性の早期の把握と個々の特性に応じた支援を行なうため、及び子どものうちから障がいに対する理解を深めるため、特別支援学級や通級指導教室の充実や様々な学びの場における指導への配慮等を行ない、障がいの有無に関わらず子どもたちが、同じ学校で個々の特性に応じた適切な教育を受けることができるよう取組を進めてまいります。
コミュニティ・スクールの推進についてですが、学校の抱える課題が複雑化・多様化する中、地域の将来を担う子どもたちのよりよい育ちを地域全体で支えるため、地域と学校が一体となって、地域の特徴を活かして児童生徒を育成していくコミュニティ・スクールの導入を段階的に進めてまいります。
次に、校庭の芝生化推進についてですが、芝生化の際に課題となる維持管理手法をはじめ、学校現場の負担軽減や遊休農地対策等、多角的に検討を行ない、子どもたちを健やかに育てる環境づくりを進めてまいります。
啓成小学校の改築についてですが、いよいよ今年度から工事に着手いたします。認定こども園の併設による保小連携や地域への開放も視野に入れたふれあい棟の新設など、本市初となる試みを盛り込んでおり、令和5年度の完成に向けて着実に進めてまいります。
次に、美保中学校区の学校づくりについてですが、校区審議会において児童生徒数の減少に対応できる学校づくりを審議していただいており、審議会の議論を踏まえて、地域の方々と共に魅力ある学校づくりを進めてまいります。
学校給食の地産地消の推進についてですが、地元業者や生産者と連携して、地元食材や郷土料理、行事食などを取り入れた特色ある給食を提供し、地域の食文化に対する関心と郷土に対する愛着を高める食育に取り組んでまいります。
このほか、学校教育の充実についてですが、新たに中学校生徒のタブレットパソコン端末にeラーニング教材を導入することで、個々の生徒に最適な学びを実現し、生徒一人一人の学力の保障と向上をめざした支援を行ってまいります。
次に、五つ目の柱「稼げる経済圏の再構築」でございます。
地産外商と働く人々の所得向上を促進し、豊かな地域づくりを進めるとともに、新しい時代の経済に対応できる人材を育成するため、次の施策に取り組みます。
まず、観光については、本市の主要産業の一つであり、コロナ禍においては近隣地域からの誘客を行なうマイクロツーリズムの推進を図ってまいります。また、アフターコロナに向けては、観光協会等の各種団体と連携し、インバウンドを含め、改めて誘客を行ない、早期の需要回復に努めてまいります。
皆生温泉の海遊リゾート構想の推進についてですが、皆生温泉旅館組合をはじめ関係者と連携しながら「皆生温泉まちづくりビジョン」を実行段階に移し、皆生温泉エリアの魅力向上を図り、「海遊リゾート・皆生温泉」として、30年後も選ばれ続ける温泉地をめざします。また、温泉街にふさわしい情緒ある灯りを創出するため、令和2年度に策定した「皆生みらいの灯りコンセプト」に基づき、海岸遊歩道や皆生海浜公園等の照明設備をはじめ、皆生温泉エリアの公共照明を順次、整備してまいります。本年度においては、皆生温泉エリアの主要な通りの公共街灯を本コンセプトにより更新することとしております。
そのほか、城下町観光につきましては、加茂川・中海遊覧船の運行体制を充実することなどにより、エリア全体の魅力向上に努めてまいります。
また、広域観光の推進についてですが、大山山麓・日野川流域観光推進協議会の会長として、鳥取県や構成自治体との調整を図りながら、地域収益向上や関係人口増加に向けた取組を検討するとともに、広域観光推進に資する事業を展開します。また、中海・宍道湖・大山圏域観光局等の広域連携組織を通じて、ワーケーションの推進などの新たな取組の検討を進めてまいります。
次に、遊休農地の解消と農業基盤整備の促進についてですが、弓浜地区を中心とした農地の遊休化は、その抑制を引き続き市の重要課題とし、農地の再生事業や中間管理事業などの推進による担い手への農地の集積を促進し、地域の実情に即した取組の支援などにより、遊休農地の解消を図ってまいります。また、皆生、富益、淀江の各地区で進めております農業基盤整備について、事業の進捗を図るとともに、農業用排水路や農道などの土地改良施設の機能維持、保全のための整備を実施してまいります。
地域特産品のブランド化の推進についてですが、白ネギ、にんじん、梨、柿など本市の特産品の品質向上と産地の生産基盤の強化を図り、ブランド化を推進してまいります。
次に、中小企業の生産性向上と競争力強化への支援についてですが、今年度中に中小企業振興条例に基づくアクションプランを策定し、具体的な支援施策を総合的に推進してまいります。また、アクションプランの重点課題となる中小企業の生産性向上と競争力強化への支援については、台湾等との海外展開を含む新たな市場の開拓やビジネスマッチングによる販路拡大など、地産外商の促進につながる取組を支援していくほか、デジタル技術の導入によるデジタル・トランスフォーメーションの促進や、新規創業、新事業展開の促進、事業承継などに係る支援を行ってまいります。
次に、企業誘致の推進についてですが、地域経済の活性化や雇用機会の創出、若者の地元定着など様々な観点から重要課題であることから、既存の企業立地補助金の制度を見直すとともに、企業誘致・情報収集体制の見直しを図り、今後も経済状況や、企業ニーズを的確に把握し、製造業に加え、IT企業、また、本社機能の移転など、本市の立地の優位性をアピールして、幅広い業種の誘致に取り組んでまいります。あわせて、県と連携し、県内へ本社機能の移転などを行なう企業の雇用者を対象として、県外から本市へ移住するための経費を支援し、企業誘致に伴う本市への移住を促進する取組を進めてまいります。
また、一部の業種において投資意欲に回復の兆しが見えていることなどから、切れ目のない企業誘致及び地元企業の業容拡張促進のため、次期産業用地の事業化に向けて、具体的な検討を進めます。
商工業振興資金貸付事業につきましては、必要に応じて予算を増額し、引き続き中小企業者等の資金繰りを支援してまいります。
住んで楽しいまちづくりファンド事業につきましては、新たに本市と鳥取銀行、及び米子信用金庫の3者の共同出資によるファンドを設立し、中心市街地や米子港周辺、皆生温泉等のエリアにおける新たな賑わいや活力を創出し、「歩いて楽しいまちづくり」の推進など、本市の施策や経済発展に寄与する民間事業者の取組を支援してまいります。
生産性向上セミナー開催事業につきましては、生産性向上や競争力強化を目的としたオンラインセミナーを開催し、市内事業者がアフターコロナにおける経営環境の変化に対応していくための主体的な取組を支援してまいります。
また、学び直しへの支援についてですが、社会人のスキルアップに必要な教育訓練講座等の受講に係る経費を助成することにより、市内企業の新規事業への取組や離職者の再就職を支援してまいります。
また、米子駅前ショッピングセンターの設備改修として、エレベーターの制御基盤等の改修工事を行ないます。
シティプロモーションの推進と関係人口の拡大についてですが、本市の魅力や地域資源を市内外に効果的に発信することで、地域への愛着と認知度の向上を図り、関係人口の増加と濃密化による地域活力の維持向上に努めてまいります。一方で、昨今のスマートフォンの普及によりインターネットを介した情報の発信と収集が主流となってきている一方、高齢者を中心に従来型の情報発信手段の有効性もなお高いものがあることから、地元ケーブルテレビ局や新聞広告などを活用した市民向けの情報発信を拡充してまいります。
次に、六つ目の柱「歴史と文化に根差したまちづくり」でございます。
地域の歴史を大切にし、後世に伝えていくよう努めるとともに、文化や芸術活動の振興を図り、私たちの生活に喜びと楽しみを創るため、次の施策に取り組みます。
まず、米子城跡の保存活用と整備の推進についてですが、貴重な文化財として適切に保存しながら、より多くの方にその価値や魅力について理解を深めていただける場として、引き続き保存活用と整備を図ってまいります。当面は、国史跡に追加指定された旧湊山球場敷地の整備として、スタンドの撤去、トイレ等便益施設の整備計画の策定、民有地の公有地化などを進めます。また、既存の指定地につきましては、石垣の修復及びサイン類の整備、危険木の伐採などを進め、文化財の保護と来訪者の安全性や快適性の確保を図るとともに、今後の適切な保存活用に向け、遺構の確認調査を継続して行ないます。あわせて、米子城跡の魅力を広く発信する取組として、発掘調査現場の公開や石垣のライトアップなどを進めてまいります。
また、尾高城跡の国史跡指定への推進についてですが、現在、市指定史跡である尾高城跡については、その歴史的価値を踏まえ、文化庁や県とも協議しながら、発掘調査や地形詳細測量など国史跡指定に向けた取組に着手いたします。
淀江傘200年記念事業の実施についてですが、本年は淀江傘が誕生して200年に当たることから、淀江傘を使った加茂川土蔵などでのライトアップや大型商業施設での和傘200本展示のほか、観光施設、宿泊施設などへの和傘貸出などを行ない、淀江傘の魅力発信に取り組んでまいります。
また、上淀廃寺跡彩色仏教壁画の発見から30年の節目を迎えるに当たり、これまでの研究成果を紹介する記念パンフレットの制作や記念講演会の開催のほか、米子高専と連携して、デジタル技術を用いた当時の建造物の再現映像の制作やエリア紹介アプリを活用した情報発信を行なうことで、改めて認知度向上を図ります。あわせて、淀江傘200年記念事業と連携した特別展示などを実施し、地域の魅力の再認識を通じて、郷土愛を育み後世に伝える取組とするとともに、県をはじめとする関係団体と連携しながら伯耆古代の丘エリアのにぎわいづくりにつなげてまいります。
また、伯耆古代の丘公園につきましては、これまでに入園料の無料化や遊具の新設、お祭り広場の芝生化、親子が遊んだりできるフリースペースの拡大等の整備を行ってまいりました。本年度は既存の駐車場に車椅子利用者スペースを設けるなど、来訪者の安全確保と利便性の向上を図ることとしており、引き続き、「誰もが気軽に利用でき、なつかしさや非日常的な気分を体験できる公園」をめざし、年次的に整備を進めてまいります。
文化芸術活動の振興への支援についてですが、美術館において、幅広く優れた芸術作品に触れていただける各種展覧会や市民参加の発表の機会を提供してまいります。また、地元出身のアーティストや地域で活動するアーティストの育成と支援に努めるほか、文化芸術活動の拠点である文化施設につきましては、市民が広く芸術に触れることができ、かつ快適にご利用いただけるよう設備の改修等を行なうこととしております。
最後に、七つめの柱、「スポーツ健康まちづくり」でございます。
年齢や性別、障がいの有無などにかかわらず、誰もがスポーツに親しみ、楽しむことができる環境を整え、健康増進につなげるとともに、介護予防とフレイル対策を推進し、健康寿命の延伸をめざして、次の施策に取り組みます。
まず、サイクリストの聖地化事業の推進についてですが、本市の豊かな自然環境を活かしたサイクルスポーツの振興を図るため、大山山麓・日野川流域観光推進協議会を通じて、弓ヶ浜サイクリングロードの利活用を促進する取組を行なうとともに、県が推進する「鳥取うみなみロード」のナショナルサイクルルート認定に向けて、関係者と連携して取り組んでまいります。また、鳥取県西部地域のコンテンツとして定着している「サイクルカーニバルinYODOE」について、新たに大山山麓・日野川流域観光推進協議会を通じて支援を拡充することで、広域でのサイクルツーリズムの推進に努めてまいります。
次に、新体育館整備の推進についてですが、市民の誰もがスポーツに親しめる場として、県と共同での整備をめざしており、民間活力によるPPP・PFI手法の導入可能性調査を実施してまいります。そのほかの体育施設整備として、どらドラパーク米子陸上競技場の第2種公認の更新に向け、トラックの全面改修などを行ないます。
スポーツ関連事業者との連携によるまちづくりの推進についてですが、スポーツ関連事業者と連携して、各種のスポーツ大会やイベントを開催し、幅広い参加者が本市の自然環境やスポーツ施設を利用した活動を楽しめる機会を提供するよう取り組んでまいります。本年度においては民間事業者と協力し、皆生温泉マリンフェスティバル2021の開催や、昨年度に引き続きトライアスリートの養成合宿を実施するほか、アジア国際ユースサッカーイン鳥取、ドリームバレーボールイン米子の開催について支援してまいります。
介護予防とフレイル対策の推進についてですが、「住み慣れた地域で支え合い、高齢者が生きがいを持って安心・安全に暮らし続けるまちづくり」の理念に基づき、「ずっと元気にエンジョイよなご健康寿命の延伸大作戦」の更なる展開を図るため、身体的、精神心理的、また社会的側面から健康づくりに向けた全市域での取組を進めてまいります。そのなかで、新たなフレイル対策として、淀江ゆめ温泉とローズセントラルビルを高齢者が継続的に活動できる拠点として活用し、健康寿命の延伸に向けた指導や活動に取り組んでまいります。
また、高齢者のサロン等の通いの場を拠点として、フレイル対策及び認知症予防を含めた介護予防事業を推進してまいります。さらには、高齢者の地域での健康づくり活動グループの立ち上げや運営を支援し、地域での健康づくりを推進してまいります。
そのほか、地域や病院などのあらゆる場面や幅広い年齢層で取り組むことのできる共通の運動プログラム「ネバーギブアップトレーニング」略して「ネギトレ」を新たに制作し、生活習慣病予防から介護予防まで横断的な健康増進策として実践してまいります。
以上、七つの政策の柱に沿ってご説明申し上げました。続きまして、現下の新型コロナウイルス感染症による市民生活や経済活動への影響に鑑み、6月補正予算に計上する対策の内容につきましてご説明いたします。
まず、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化に伴い、総合支援金の再貸付が終了した生活困窮者に対しまして、自立に向けた支援金の支給を行ないます。
また、コロナ禍により子育て家庭の虐待リスクの高まりが懸念されることから、子ども食堂などと連携して、児童虐待の早期発見、早期対策につなげるため、新たに子どもの見守り体制の強化に取り組んでまいります。
新型コロナウイルスのワクチン接種に係る移動困難者に対する支援として、タクシーによる接種会場への送迎支援を行なうとともに、新型コロナウイルス感染症の影響により、日常生活に制約を受ける妊産婦に対する移動支援として、タクシーチケットの配布を行ないます。
そのほか、市民生活や経済活動への影響を考慮し、下水道使用料及び農業集落排水施設使用料の改定時期を、当初予定していた本年4月検針分から半年間延期したことによる使用料収入の減収分について、一般会計から下水道事業会計へ繰出を行ないます。
コロナ禍による農業収入の減少への対策として、新たに農業収入保険へ加入される農業者の保険料について支援を行なうほか、新型コロナウイルス感染症対策融資利子補助事業について予算を増額し、コロナ禍における中小企業者等の資金繰りについて期間を延長して支援してまいります。
また、小中学校の修学旅行や校外学習に係るバス代について助成するとともに、修学旅行を延期等した場合のキャンセル料について助成することにより、保護者の負担軽減を図ってまいります。
そのほか、市内公民館のインターネット環境を光回線化することにより、オンライン会議やリモート学習など、新しい生活様式に対応した利用ができるよう環境整備を行ない、地域の拠点としての機能強化を図ってまいります。
以上、今後の市政運営に当たりまして、私の政治理念や当面の課題などへの対応方針について申し述べましたが、これまで4年間で方向性を示してきた課題や新たに着手した施策について取組を更に進め、その成果を確実なものとするためにも、引き続き複雑化・多様化する社会の諸課題に対してスピード感を持って臨んでいかなければなりません。今後とも、持続可能な財政運営を旨としながら、先例や慣例にとらわれることなく、新しい挑戦ができる仕組みを心掛け、施策の選択と集中を基本とした市政運営にまい進する所存でございます。
掲載日:2021年6月24日