総泉寺のねずみ

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総泉寺のねずみ
 総泉寺のねずみ

雪の降る寒い夜に寝ていると、ねずみが天井裏でゴトゴトとよく騒いでいたものでした。
昔話に「ねずみ退治」という話があります。

「昔、ある寺で猫を飼っていた。ある日、和尚さんがねずみに食われる夢を見た。翌日の夜、和尚さんが寝ていると、飼い猫がやって来て寝間着を引っ張るので起き上がり、別の部屋で寝た 代わって猫が和尚さんの寝床に入っていた。
しばらくすると、猫が身代わりに入った寝床で物すごい音と声がしたので、あわてて和尚さんが飛び込んでみると、一匹の大ねずみが飼い猫に噛み殺されていた。大ねずみは和尚さんを殺そうと襲ったが猫が寝ているとは知らず逆に殺されてしまったのだった。飼い猫はこうして和尚さんに恩返しをして寺を出て行ったと。」

この話に似た話が伝わっています。今月も総泉寺にかかわる話です。

…むかし、総泉寺にはキュウソという親分のようなねずみが住みついていて、夜な夜な寺の天井裏を我が物顔で暴れ回っていたので、和尚さんを始め檀家一同困っていたそうな。
そこで登場するのが、ねずみの天敵の猫。強そうな近所の猫を借りてきて天井裏に放すけれども、借りてきた猫だからでもあるまいが、キュウソの前に出ると、どいつもこいつも尻尾を巻いて、すごすご逃げ出すだらしなさ。ついには米子の町中から強そうな猫をかき集めて放すけれども結果は同じで手も足もよう出さず、震え上がって引き返す体たらく。
困り果てたお寺では、最後に仕方なく檀家の一軒に飼われていた、いっつも眼には眼やにを垂らし寝そべっており、歩くときにはいかにも大儀そうによたよたと歩くよぼよぼ猫を、どうせすぐさまキュウソに追われて逃げ帰るだろうが、ものは試しだ、とばかり、全く期待もせずに天井裏に追い込んだだと。
ところが、以外や以外、このよぼよぼ猫、キュウソに対しても憶することなく対し、追い回しはじめた。まあこれが当り前のことだけどなあ。
その夜から、キュウソは、「キュ」とも言わず、おとなしくなってしまったそうですと…


ねずみ退治の話が伝わる総泉寺(愛宕町)の本堂

平成12年2月号掲載

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掲載日:2011年3月18日

【利用上の注意】

掲載している昔話・伝説・言い伝えなどの民話は、地元の古老から聞いた話や地元での伝承話、また、それらが掲載された書籍などからの情報を載せているものですので、活用する際は次の点にご注意ください。

  • 民話は、ある程度の史実が背景にあったとしても、それが人々の想像の中で改変され、また、伝承の過程でさまざまな変化を遂げていきます。そのため、史実とは異なる内容、名称等が使用されている場合や学術的な裏付けがないものもあります。

  • 捉えかたにより、記載されている年号や年代、月日、読みかたなど、事実と異なる可能性があります。

  • 「過去の経験を後世に伝えたい先人の強い思い」として読みとるなど、「地域で語り継がれている事実」に着目することが必要となります。

  • 民話は、すべてが史実ではありませんが、地域にとってたいせつなものが含まれていると考えられます。

  • 筆者は、執筆に関しては、市内各地域をまんべんなく入れること(ただし、合併前のものなので淀江町域の話はありません。)、あまり血なまぐさい話は避けること、故人で忘れられている偉人を発掘し民話に託して語ること、などを心掛けて編集されています。