上新印の金の鶏石

本文にジャンプします
メニュー
上新印の金の鶏石
上新印(かみしい) の金の鶏石

明けましておめでとうございます。
元旦に鶏、なかでも金鶏の鳴き声を聞くと、その年は福が舞い込む、寿命が延ぴる、て言う伝承があって、その為でしょうか元旦のテレビには尾長鶏が、長々とその嶋き声を聞かせますが…。
陰田の天神山(道路工事で消失)の頂上には、元旦から三が日の間に、金鶏が舞い降りて金の卵を生むとか、鳴くと言われており、その卵を取ったり、声を聞いたりした者は、やっぱり福が来る、と言ったそうですよ。

上新印(春日地区)の円福寺の境内には、蓋付きの大きな石があります。 円福寺とこの大石は、昔は日下の「山ノ寺」という所にあったそうです。 その頃からこの大石の中には金の鶏が入っとって、元旦だけ石の中で鳴いて、福を村の人にくれるけえ、ふた石は絶対に取ってはいけんぞ、取れば金の鶏が逃げてしまうけえ、と言われとりました。いや、鳩が入っていると言う人もいますが、私は金の鶏と聞いとります。
ですけど「絶対に」と言われとりゃあ反発してみたいのも人情でしょう。寺には性の辛い小僧さんがおったそうで、これがタブーを破ってふた石を開けたそうです。すると案の定、中から金の鶏が飛んで出て、陽にキラキラ輝きながら空高く飛んでいきましたと。
和尚さんは小僧を叱ると同時に、金鶏の行方を追わせました。 金鶏は、山の松の枝に止まってあたりを見回していましたが、やおら飛ぴ立って上新印の小堀陣内という侍さんの屋敷跡という、今の円福寺に降りました。
小僧さんが和尚さんにそのことを報告すると、和尚さんは早速その場所に出かけ、寺そのものをそこに移転してしまいました。 もちろん金鶏の入っとった大石も、えっちらおっちら運んできて、前のように金鶏を入れて、しっかりとふた石を載せました。

元旦にお寺に行って、この石の中で嶋く金鶏の声が聞けれぱ、福が授かる、と今でも言いますよ。エ?またふた石を開けたら金鶏が飛ぴ出るかって?。 そりゃあんた今度は、「明けましてコケコッコー」でしょうで。


上新印の円福寺にある金鶏が入っているといわれている大石

平成10年1月号掲載

前のおはなしへ 次のおはなしへ
掲載日:2011年3月18日

【利用上の注意】

掲載している昔話・伝説・言い伝えなどの民話は、地元の古老から聞いた話や地元での伝承話、また、それらが掲載された書籍などからの情報を載せているものですので、活用する際は次の点にご注意ください。

  • 民話は、ある程度の史実が背景にあったとしても、それが人々の想像の中で改変され、また、伝承の過程でさまざまな変化を遂げていきます。そのため、史実とは異なる内容、名称等が使用されている場合や学術的な裏付けがないものもあります。

  • 捉えかたにより、記載されている年号や年代、月日、読みかたなど、事実と異なる可能性があります。

  • 「過去の経験を後世に伝えたい先人の強い思い」として読みとるなど、「地域で語り継がれている事実」に着目することが必要となります。

  • 民話は、すべてが史実ではありませんが、地域にとってたいせつなものが含まれていると考えられます。

  • 筆者は、執筆に関しては、市内各地域をまんべんなく入れること(ただし、合併前のものなので淀江町域の話はありません。)、あまり血なまぐさい話は避けること、故人で忘れられている偉人を発掘し民話に託して語ること、などを心掛けて編集されています。