キツネの遊女

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キツネの遊女
キツネの遊女

昔、灘町の(ただす)神社にキツネが3匹住んどって、こいつが悪賢い奴だったそうな。1匹が別ぴんの女に化け、通りかかる若者に「腹が痛い」いうて泣く。若者は気の毒に思うて腹をさすってやっていると、侍に化けた仲間がやってきて「俺の家内に手を出すとは何事か!ぶった切ってやる」と刀に手をかける。若者が青くなって詫びている所に六部(巡礼者)に化けたのがやってきて「(こら)えてやってごせ、悪気があってしたじゃあないだけん」という。すると侍は「そげなら頭を()れ。堪えちゃる」
そういってあの辺の若い衆は大勢キツネに頭を剃られておったそうな。
ある日、この悪いキツネたちの上をいく悪賢い男がやってきて、娘と侍と六部に化けて出てきたキツネを「お前たちの正体は知っとるぞ。みんな叩き切る」と逆に脅した。キツネはあわてて()びを入れて「あなたの言うことなら何でも聞きます」といった。男は「そんならみんな一番きれいな娘に化けてみろ」といって娘に化けさせ、灘町の遊女屋に連れて行き、主人に「この娘たちを買ってごせ」と頼んだ。
主人は娘を眺め回して吟味して、3人まとめて買った。男は金を受け取り、主人は別ぴんを手に入れ、娘も一緒に5人上機嫌で酒を飲んで別れた。
男は家に帰る途中、薬屋に寄って膏薬(こうやく)をたくさん買って帰った。
家に帰ると男は妻に「いいか、明日だれが来ても、わしは10日ほども前から歯がうずいて体中に膏薬を貼って寝とる、と言え」いうて膏薬を体中に貼って寝てしまった。
さて遊女屋では、夕べ来た娘3人が朝になっても起きて来んので、主人が部屋に行ってみたら、なんとキツネ3匹正体を現わしたまま寝とった。主人に怒鳴られ、3匹はあわてて糺の森にとんで帰った。主人は男の家に行き「夕べ払った金を返せ」と迫るが、男は「わしは10日も前から歯が痛うて、家から一歩も外に出とらん。こげして膏薬貼って寝とう所だ。夕べの男も、おおかたわしに化けたキツネだったんでしょう」と言ってほっぺたをさすりながら横になった。主人は気の毒に思うて見舞い金を置いて帰っただと。
その昔コンポチ。


糺神社正面

平成15年11月号掲載

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掲載日:2011年3月22日

【利用上の注意】

掲載している昔話・伝説・言い伝えなどの民話は、地元の古老から聞いた話や地元での伝承話、また、それらが掲載された書籍などからの情報を載せているものですので、活用する際は次の点にご注意ください。

  • 民話は、ある程度の史実が背景にあったとしても、それが人々の想像の中で改変され、また、伝承の過程でさまざまな変化を遂げていきます。そのため、史実とは異なる内容、名称等が使用されている場合や学術的な裏付けがないものもあります。

  • 捉えかたにより、記載されている年号や年代、月日、読みかたなど、事実と異なる可能性があります。

  • 「過去の経験を後世に伝えたい先人の強い思い」として読みとるなど、「地域で語り継がれている事実」に着目することが必要となります。

  • 民話は、すべてが史実ではありませんが、地域にとってたいせつなものが含まれていると考えられます。

  • 筆者は、執筆に関しては、市内各地域をまんべんなく入れること(ただし、合併前のものなので淀江町域の話はありません。)、あまり血なまぐさい話は避けること、故人で忘れられている偉人を発掘し民話に託して語ること、などを心掛けて編集されています。