木から落ちたタヌキ

本文にジャンプします
木から落ちたタヌキ
木から落ちたタヌキ

秋も深まると、昔は澄んだ月に誘われてキツネやタヌキが夜通し遊んでいたといいます。
「山伏キツネ」という昔話があります。

…昔、山伏が祈祷を頼まれて山道を歩いていたら、前の晩の遊びが過ぎて疲れて昼寝をしているキツネの前を通りかかった。よせばいいのに、いたずら好きな山伏は、持っていたホラ貝を寝ているキツネの耳にあてて、おもいっきり吹いた。キツネはびっくりしたのなんのって。寝耳に水…いやホラ貝で、飛び起きるやいなや山の中に逃げ込んだ。
山伏は大笑いしながら歩いていた。すると、まだ陽は高いと思っていたのにあたりが急に暗くなってきた。ありゃ、もう陽が暮れたか、と思って暗い夜道を凝らしてみると、何やら向こうから明かりが一つやって来る。見るとそれは葬式の行列だった。山伏は道を譲ろうとするが、狭い山道で譲りようがない。仕方なく道端に生えていた木に登って葬列をやり過ごそうとした。ところがこの葬列は、その木の根っこに棺桶を埋め、そこを墓にして拝みだした。しばらく拝んで葬式も終わって和尚さんも縁者の人もみんな帰ったので、山伏はやれやれと思って木から降りかけたら、さっき埋めたばかりの棺桶がぐらぐら動きだし、中から死人が出てきて、山伏の居る木に登ってきた。彼は驚いて降りかけた木をまた上がっていった。死人は山伏をめがけてどんどん上がってくる。山伏も震えながら木を上がっていった。が、死人も追っかけるのを止めない。山伏はとうとう木のてっぺんの梢まで追い上げられ、これ以上登れんしどうしようもない、と梢につかまってゆらゆらしとったら、ポキン!とその梢が折れて山伏は地面に向かってまっさかさま。これで一巻の終わり、と観念して落ちていたら、周りが急に明るくなって、山伏はキツネに化かされとったことに気付いた。昼寝しとったキツネを驚かしたので、その仕返しをされたのだと…

岩倉町にある本教寺の庭には、以前、大きなイチョウの木がありました。その大木の上でキツネではなくタヌキがよく昼寝していたんだそうです。
ある日、お寺の檀家の人が、この木の下でホラ貝を吹かれたそうです。すると、その音にびっくりした木の上のタヌキが転げ落ちたんだそうです。
そのタヌキが仕返しをした、とは聞いていませんが、似たような話があるものです。


本教寺境内・イチョウの大木のあったところ

平成15年10月号掲載

前のおはなしへ 次のおはなしへ
掲載日:2011年3月22日

【利用上の注意】

掲載している昔話・伝説・言い伝えなどの民話は、地元の古老から聞いた話や地元での伝承話、また、それらが掲載された書籍などからの情報を載せているものですので、活用する際は次の点にご注意ください。

  • 民話は、ある程度の史実が背景にあったとしても、それが人々の想像の中で改変され、また、伝承の過程でさまざまな変化を遂げていきます。そのため、史実とは異なる内容、名称等が使用されている場合や学術的な裏付けがないものもあります。

  • 捉えかたにより、記載されている年号や年代、月日、読みかたなど、事実と異なる可能性があります。

  • 「過去の経験を後世に伝えたい先人の強い思い」として読みとるなど、「地域で語り継がれている事実」に着目することが必要となります。

  • 民話は、すべてが史実ではありませんが、地域にとってたいせつなものが含まれていると考えられます。

  • 筆者は、執筆に関しては、市内各地域をまんべんなく入れること(ただし、合併前のものなので淀江町域の話はありません。)、あまり血なまぐさい話は避けること、故人で忘れられている偉人を発掘し民話に託して語ること、などを心掛けて編集されています。