天狗の相撲取り

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天狗の相撲取り
天狗(てんぐ)の相撲取り

江戸時代の米子の怪談集にある話です。

…米子の町はずれに1人の木こりがおった。彼は実直な胆のすわった男だった。
ある日、いつものように山に入って木を()っていたら、そこへ山から天狗が降りてきた。彼は、驚いたが知らん顔して、心の中では、隙を見て天狗を切りつけようと考えた。すると天狗は「お前は今わしの隙を見て切りつけようと考えとるだろう」といった。
木こりはびっくりしたが顔には出さず、まあこのまま知らん顔しとこう、天狗もわしに悪さをすることはなかろう、と思っていると、また天狗が彼の心の中を言い当てた。木こりはもう何も考えずに、天狗に見守られながら無心で木を伐っていた。すると、伐った木の木っ端が飛び散って、思いもかけず天狗の自慢の鼻を直撃した。天狗はびっくりしたのなんの「いやぁお前は偉いもんだ。人間に負けたのは始めてだ。いやぁ参った、参った」いうて山に帰っていったと…

天狗の性質の一つに、人間の心を読む、というのがあったようです。よく知られている性質に、空を自由に飛ぶことができる、というのがあります。
勝田神社の春の祭日は4月15日です。神社には立派な土俵場がありますが、江戸の昔も祭日には奉納相撲が盛んに行われていたようです。

…江戸の昔のことです。祭の日、奉納相撲も取組が進んで夜も更けたころ、今まで見たことのない若者が現れて土俵に立った。その若者のいや強いこと、強いこと、並みいる力士は片っ端から土俵にたたきつけられ、賞金をかっさらってしまった。米子の若い衆は悔しいやら腹が立つやら、とうとう卑怯にも、かの若者が帰るところを闇討ちしよう、ということになった。ところがその若者は、その場所から煙のように消えてしまった。
後になって、あの若者は天狗が他所(よそ)から空を飛んでつれてきて、終わるとまた空を飛んでつれて帰ってしまったんだ、といううわさが立ったそうです…

今はハワイやモンゴルから力士がやってくる時代です。彼らも天狗に乗ってきたのでしょうか、みなさん強くて鼻高々だから。


勝田神社境内にある土俵

平成15年4月号掲載

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掲載日:2011年3月22日