そろばんの日

本文にジャンプします
メニュー
そろばんの日
そろばんの日

…昔、佐賀の唐津に勘右衛門(かんうえもん)(通称かんね)という愉快な人がいた。ある日、庄屋の隠居と話していたら、隠居は猫好きで話は猫の話になった。
かんねは隠居に言った。「お宅の三毛猫もいい猫だが、うちには十五毛猫がおる」隠居は驚いて、その猫をぜひ見たいと言いだし、かんねの家に行った。かんねが「お花や」と猫を呼ぶと、かまどの中から汚れてやせこけた小猫がよろよろと出てきた。かんねが「これが十五毛猫です」と言う。隠居は「なんでこんなやせて汚い猫が十五毛猫だ?」と怒りだした。かんねはけろっとして「もとはこの猫も三毛だったが温かい所が好きで、くどに入って火傷してよろよろしちょる。だから三毛が焼(八)けてし(四)けちょるけん、合わせぇち十五毛になっちょるばい」と、そばにあったそろばんを取り上げてパチパチはじいて隠居に見せた。隠居はあきれて帰ってしまったと…

佐賀の「かんね話」という笑い話の1つです。

8月8日はパチパチでそろばんの日です。
そろばんも複雑な計算になると、その方法にも幾通りかあるそうで、その一つを発明された人に上後藤出身の松永藤一郎さん(文化7年・1810年生まれ)がおられます。小さい時からお父さんにそろばんを学び、奥義を極め、その方法を「松永流珠算捷径(しょうけい)新法」「珠算乗除捷径法」に著し、若いとき宮相撲で大関を張ったという強い体で全国各地に招かれ講習会を開いて普及宣伝の結果、門人が3万人にもなったそうです。
松永さんの偉いところは、松永流の方法を習得した人を会員とする会組織を作り、会員が松永流を他人に伝授した時は、受講料の1/10を松永さんに、2/10を会に、残りは講師の収入とする、という現代風に言えば、わずかだが発明特許料の徴収をしておられることです。公の権利ばかりが前面に出、私の権利は認められそうにない、まして個人の発明権というような考えかたさえなかったと思われる明治初期にあって、発明者が発明料を利用者から受け取ることは、当然の権利として実行された松永さんの考えかたは、現代騒がれている知的財産の保障の先駆でもあり、米子の生んだ優れた先覚者の1人でしょう。明治24年7月20日、講習会先の四国坂出で客死されました。享年82歳。


上後藤にある松永藤一郎さんのお墓

平成16年8月号掲載

前のおはなしへ 次のおはなしへ
掲載日:2011年3月22日

【利用上の注意】

掲載している昔話・伝説・言い伝えなどの民話は、地元の古老から聞いた話や地元での伝承話、また、それらが掲載された書籍などからの情報を載せているものですので、活用する際は次の点にご注意ください。

  • 民話は、ある程度の史実が背景にあったとしても、それが人々の想像の中で改変され、また、伝承の過程でさまざまな変化を遂げていきます。そのため、史実とは異なる内容、名称等が使用されている場合や学術的な裏付けがないものもあります。

  • 捉えかたにより、記載されている年号や年代、月日、読みかたなど、事実と異なる可能性があります。

  • 「過去の経験を後世に伝えたい先人の強い思い」として読みとるなど、「地域で語り継がれている事実」に着目することが必要となります。

  • 民話は、すべてが史実ではありませんが、地域にとってたいせつなものが含まれていると考えられます。

  • 筆者は、執筆に関しては、市内各地域をまんべんなく入れること(ただし、合併前のものなので淀江町域の話はありません。)、あまり血なまぐさい話は避けること、故人で忘れられている偉人を発掘し民話に託して語ること、などを心掛けて編集されています。